QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 中国企業の海外企業買収のその後(国際企業戦略論/永池 克明)

中国企業の海外企業買収のその後(国際企業戦略論/永池 克明)

09/03/26

■「走出去(ゾウチュチィ)」政策
最近、中国の企業が海外企業を買収するという動きが
激しくなっています。
もともと中国は改革開放以来、特に2000年以降に
海外企業を買収するという動きがあり、
第一段階、第二段階を過ぎ、現在は第三段階というふうに整理できます。
中国政府自身が、かつては外資をどんどん導入した時代もありましたが、
最近では少し選別し始めており、
むしろ中国の有力企業がどんどん海外に進出すべきいう指導を、
特に2000年以降、相当積極的に国家資金をかなり使って後押ししています。
こうした背景には、中国の貿易黒字が拡大しているということ、
そして外貨準備が非常に増えているということが挙げられます。
また、中国の欧米諸国に対する貿易黒字が増えているので、
欧米諸国との貿易摩擦が激しくなってきております。
これに対応して現地に直接投資をして工場を作ったり、
現地企業を買収して、アメリカならアメリカ市場に入り込む、
つまり、インサイダー(アメリカ企業になる)になっていかないと、
現地の反発が厳しいという、そういった理由もあるようです。
中国の対外政策を表す2つの代表的な言葉をご紹介します。
「企業の海外投資を歓迎します、中国にどんどん来て下さい」
というのが、中国語で引進来(インジンライ)という言葉です。
逆に「海外市場に打って出る」というのが
走出去(ゾウチュチィ)という言葉です。
最近は特に、出て行く方を中国政府は強力に奨励し始めています。
その目的としては、いくつかありますが、
1つ目には海外市場を獲得するということです。
これは中国国内の市場が、すでに飽和状態ということではなく、
これからさらに国内市場も拡大していきますが、
あまり国内ばかり投資していると、経済が過熱してしまうという恐れがあります。
そこで中国企業が海外市場で強い地位を獲得し、
更にグローバル化を進めるという目的です。
2つ目は資源の獲得ということです。
これはメーカーというよりも、石油、銅、鉄などの鉱物資源や
天然ガス等を保有する外国の企業を買収することによって
エネルギー源を確保するという狙いであり、
2005年以降、特に積極化しており、
アフリカの方にまで手を伸ばしています。
3つ目は海外企業を買収する、特に先進国の企業を買収することによって、
先端技術を獲得するということです。
4つ目は中国企業の海外でのブランド力の向上を狙った
企業買収ということも積極的に進めています。

■代表的な事例の紹介
中国の大手企業は、海外市場を積極的に進めており、
特に2001年から2004年までというのが、
第二次海外投資ブームと言われています。
2005年から現在は第三次ということで、
件数も2万件位増えています。
その中で沢山例はありますが、ここではあまりうまくいっていない、
苦戦している事例を少し紹介したいと思います。
1つは、有名なレノボ(聯想)によるIBMのパソコン部門の買収ですが、
これはその後かなり苦戦しています。
実は、このレノボ(聯想)は現在、創業以来の不況に喘いでいます。
2004年12月に買収した後、現在5年目を迎えているわけです。
これまでは、比較的グループ全体の売り上げ利益というのは安定成長を維持しており、
中国企業の海外企業買収の成功例としてずっと言われてきましたが、
去年からの世界同時不況の影響もあって、
現在大変業績が悪くなっています。
特に、グローバル化に成功した買収という意味では、
大きなクエスチョンマーク(疑問符)が付くところです。
確かに、日本でもレノボ(聯想)という名前もかなり浸透してきており、
私たちの周りでも「レノボ(聯想)いいよね」という話も聞くようになってきています。
ところが、注意しなければならないことは、
レノボ(聯想)の事業構造や収益構造を見ると、
グループの利益のほとんどを中国市場で稼いでおり、
その他の地域は皆営業赤字になっているということです。
ごく直近の2008年10~12月期のレノボ(聯想)の決算によると、
9,671万ドル、約8、90億円弱の赤字になっており、かなり厳しい状況です。
こうした状況を受け、CEO(最高経営責任者)の
ウィリアム・アメリオ(William Amelio)というアメリカ人が辞任し、
後任には、会長の楊元慶(Yang Yuanqing)氏、
会長は創業者の柳傳志(Liu Chuanzhi)氏が復帰しました。
この結果、経営のグローバル化・現地化が若干後退して、
中国化が進んだという状況になっています。
次に、自動車業界に触れてみます。
上海汽車という有力な中国の自動車会社の例をお話します。
同社は2005年に韓国の自動車業界第5位の
雙龍(そうりゅう)自動車に51.3%出資しましたが、
現在なかなかうまくいかず、会社更生法適用を受け、
完全に失敗しています。
当初は中国で合弁会社(ジョイントベンチャー)を計画していましたが、
中国政府の認可が下りなくて、まず第1回目のトラブルが起こりました。
何故かというと韓国の雙龍側が中国への
技術流出というのを非常に恐れたからです。
研究開発拠点も中国に併設するという計画でしたが、
拒否したということが大きな原因になってしまいました。
マネジメントでも、元GMの幹部だった、アメリカ人の経営者を副社長にして、
これを雙龍の担当に据えましたが、
その彼がクライスラーに引き抜かれ、
会社を去って行ったということもありました。
さらに韓国は労使関係がなかなか難しい国で、
この会社の場合も労働組合が中国大使館の前でデモ行進を行い、
上海自動車としては嫌気がさしたということがあるようです。
以上のような失敗を総合すると、両社に欠落していたのは、
お互いに協力して相乗効果を引き出し、
企業価値を高めようという発想が欠落していたということを言わざるをえません。

■今後の展望
最後に今後の展望ですが、中国総務相は今年に入り
中国の海外投資に対する法案を提出しました。
それによれば、1億ドル(92億円)以上の投資案件の場合、
これまでは省政府にかなり委ねられていたのが、
中央政府が直轄的に厳しくチェックすることになりました。
そして、中国の企業経営者の海外でのマネジメント能力が非常に試されています。
外国企業を買収した後、レノボ(聯想)や雙龍や
上海汽車のような苦戦を強いられないように、
買収した会社をいかにうまく経営していくか、
という真の経営能力が厳しく問われることになります。
資金さえあって、買収すればいい、というわけにはいかないようです。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ