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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 取引コストと垂直統合(中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

取引コストと垂直統合(中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

09/03/16

■垂直統合

今回は「取引費用」と「垂直統合」についてお話します。
まず、「垂直統合」という言葉の解説からはじめます。
「垂直統合」とは、厳密な定義でいうと、
原材料市場から製品市場までに様々な業務活動が
行われている中で、企業が企業内で行う活動が増えることを、
「垂直統合」として定義しています。
もっと分かり易く言えば、ある活動が市場取引から組織取引へと変化し、
それまでに、外部に任せていた活動を
自らが行うようになることです。
このことは、現代の企業にとって最も重要な
意思決定の1つとなっています。つまり内製するか、
または市場から買うかという、“make-or-buy”(メイク オア バイ)の
意思決定が、従来の企業にとって
最も基本的な意思決定となっています。
そして、時代の流れとしては、外部に任せていく方が多くなっています。

■垂直統合の2つの決定要因

企業が内製するか、あるいはアウトソーシングするか
という意思決定に影響する要因を今回は2つ紹介します。
1つ目は「資産の特殊性」という、少し理屈的な話です。
これは、ある人と取引をするとその価値は高いですが、
別の人と取引をすると、同じものであっても
その価値が逆に下がってしまうということです。
例えば、特殊な部品を必要とする組み立てメーカーがある場合、
そのメーカーに特殊な部品を供給するサプライヤーが存在します。
この場合、サプライヤーと組み立てメーカーとの間に
取引が行われますが、サプライヤーは、特殊化したものに対して
投資した方が、最も望ましいと考えられています。
しかし、このように非常に限定された分野における投資は、
別の分野へと転用することが逆にできなくなるので、
いわゆる「ホールドアップ」という問題が発生します。
というのは、一旦特殊部品の製造に特化すると、
部品メーカーとしては足元が見られてしまうので、
交渉力が低下してしまいます。一方、組み立てメーカーですが、
取引の初期段階では取引を行うと言っておきながら、
不確実性が存在するためにいつかは
その取引を中断してしまう危険性も存在します。
こうしたいわゆる機会主義的な要素が存在する中で、
特殊化された部品については市場から調達することは
なかなか難しいのです。その結果として、
内製に踏み込んだケースが多いようです。
2つ目は、技術の不確実性と組織間コラボレーションの問題です。
これは伝統的な取引コスト論に従えば、
ガバナンスの問題とマネジメントコントロール
という問題が非常に大事になってきます。
そして、技術の不確実性という問題を無視してはいけません。
これは、先行きの見えない技術開発ということです。
非常に新規性の高い技術開発というのは、
企業として常に考えないといけないことですが、
それを開発する体制として同じ組織内で行うのか、
あるいはそのサプライヤーとの間に組織間において
技術開発行うのかという選択肢が存在します。
結果的には、同じ組織内において技術開発を行うことによって、
学習効果が期待されています。
特に、「暗黙知」という言葉が存在するように、
形式化が非常に難しい「企業文化」があるかもしれないので、
そういった「暗黙知」が非常に大事とされる技術開発において、
同一組織内におけるコラボレーションが
上手くいくのではないかと言われております。

■垂直統合の決定要因の具体例

こうした具体例として、面白い例があります。
これは、先ほど申し上げました、「資産の特殊性」という問題で
よく解釈されているアメリカの事例です。
1926年にGMは、当時の部品メーカーとして、
フィッシャボディという車体を作っている部品メーカーの
100%の株を取得し、買収しました。この出来事につきまして、
先ほどの1番目の解釈として、「ホールドアップの問題」と
捉えられていました。つまり、フィッシャは
GMの都合に合わせた工場建設を拒否し、
結果として、やはり内部コントロールが非常に大事である
という1つの判断から、100%の株式を買収した
というような解釈でした。
しかし、最近のアメリカの自動車産業の研究者によると、
この解釈は間違っているようです。
どこが間違っているかといいますと、
買収する以前からGMはすでにフィッシャの
60%の株式を持っていたこと、更に事実関係としては、
部品工場の建設や価格設定においても、
フィッシャとしては、GMの都合に合わせるということにも同意しました。
よって、コントロールの問題はあまり重要なものではないと考えられる。
それなのに、なぜあえて100%の株式を買収したかという理由ですが、
GMが狙っていたのは、フィッシャーブラザーズの持っている
素晴らしい設計技術の能力とそのエンジニアリング能力でした。
当時のクライスラーは、部品メーカーとの間で
別々に技術開発を行っていました。
一方でGMは同じ同一組織内において、
技術の移転をもっとし易くなるという1つの意図から、
あえて買収に踏み切ったということです。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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