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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 自動車業界の現状(財務戦略村藤 功)

自動車業界の現状(財務戦略村藤 功)

09/03/13

自動車業界の現状(財務戦略/村藤 功)

■GMの状況
今回は、自動車業界のお話をさせて頂きます。
これまで何度もお話させて頂いていますが、
まず、アメリカの現状から確認していきます。
これが相変わらず大変です。
2月17日に、再建計画を出しなさい、ということになっていたので、
一応、再建計画を提出しました。
そして3月末までに政府の承認を得る必要があります。
しかし、できない場合には政府は直ちに返済を求めることになります。
そうするとGMは立ち行かなくなりますので、破産法11条、
チャプター11の適用申請に追い込まれる可能性が高いわけです。
民主党は、基本的に自動車業界を守るという姿勢ですが、
共和党はそうではありません。
保護にはいくらかかるのか、3兆円、4兆円という話ではなく、
10兆円という額になってくると、共和党はアメリカ政府には、
そんなお金はないと考えています。

この3ヶ月で、フェデラルリザーブ、連邦準備銀行という、
ドルを発行する中央銀行のバランスシートが、
3倍位に大きく膨らんでいるので、一生懸命お札を刷って、
危機的状況にある金融機関などを助けている事が分かります。
しかし更に自動車業界を助けることになったら、
他の業界も皆助けて下さいということになりかねません。
そうすると、さらにお金を刷ることになってしまいます。
どこを助けなければならずどこを助けなくていいのかは、
よく分からなくなってきた状況です。

政府の動きを見ていると、民主党は絶対に自動車業界を守る、
と今のところ言っています。
ただ、債権者や労働組合(全米自動車労組)が経営側のお願いを、
了承してくれた上で再建計画を提出したのであれば良かったのですが、
結局、それに間に合わなかったのです。
もともと債権者が、デットエクイティスワップといって、
借り入れを自己資本に変えること、あるいは労働組合が、
経営側のお願いしていたことを了承してくれていれば問題はなかったのです。
お願いしたことの中にあった、ジョブズバンクの凍結や、
人件費を日本のメーカー並に下げるという条件は、
ある程度何クリアできたのですが、今、問題なのは、医療保険のことです。
GMは全米自動車労組(UAW)に、約束していた、
医療保険信託基金への拠出金200億ドルの半分を、
GMの株で出したいということを言っています。
しかしその株は、いくらになるのか分からないと言って、
労働組合が大反対しています。
その労働組合の合意がとれない内に再建計画を出さなければならなくなり、
とりあえず提出しなければなりませんでした。

それから、債権者の問題ですが、もともと政府が、政府支援の前提として、
GMは、無担保債務275億ドルの3分の2を、債権者にお願いして、
デットエクイティスワップで自己資本に変えてもらってくださいと言っています。
しかし債権者の側からすると、GMの経営状況が悪くなっていく中で、
債務超過も大きくなっています。
この状況で自己資本に変えるということは、
価値のない自己資本になってしまう可能性があるわけです。
それは嫌だということで、これも合意に至らず交渉中です。
3月末までに、両方、あるいは、どちらかがOKと言わないと、
提出した再建計画は実行可能になりません。
これらを勘案すると、破綻の可能性は高まっている感じがします。
去年の12月から、ムーディーズは破綻確率70%というような、
恐いことを言っています。


■他ビック3の状況
フォードは、それほどひどいことにはなっていません。
しかしクライスラーが、GMと同様の問題を抱えています。
GM危機の前から、クライスラーは危ない状況になっていました。
そこでイタリアのフィアットが、ちょっとお手伝いしましょうか、
というようなことを言いに来ました。
しかし良い話かと思ったら、タダ同然で、
クライスラーを手に入れようというもので、
しかもアメリカ政府にクライスラーへのお金は出し続けてください、
というお願い付きの計画でした。
アメリカの国民の税金を山のように使って、クライスラーを助けて、
それをフィアットにあげるのかという辺りが、
若干問題になってきたという状況です。


■世界の自動車産業危機
自動車業界そのものが、結構困ったことになってきています。
そもそも、ゴーン氏によれば、2009年の販売予定は、
世界全体で5500万台位だそうです。
しかし今、世界には9400万台位の生産能力があるそうです。
9400万台も作れるのに、5500万台しか売れなかったら、
4000万台位が余剰生産能力になってしまいます。
これをどうすればいいのでしょうか。
そもそも1つの工場で平均すると20万台位の車を生産するものです。
ですから200ほどの工場を閉めないと、生産ラインが、
フル稼働しないことになります。
100%でなく7-80%の稼働率をめざすとしても、
少なくとも50~60の工場を世界中で閉めなければならないでしょう。
これはアメリカだけの問題ではありません。

この問題に対して短期的にワークシェアリングして、
様子を見るのはいいのですが、その状態が永遠に続いたら、
立ち行かなくなります。
計画でGMは、一旦は需要が下がるが、また戻る、
という見通しを立てました。
ところが、需要が戻るかどうかはよく分からないというのが実状です。
ですから共和党は、いくらつぎ込むのか分からないから、
支援はもうやめようと言っています。
放置すれば破綻する企業は、政府で支援せずに破綻していただけ、
ということです。

日本メーカーも、アメリカの市場は1600万台だと思っていました。
ところが、アメリカ市場が1000万台を切るかもしれない、
という見通しになってきて、慌てています。
日本メーカーも1600万台のマーケットを前提に工場を作っていたからです。
ですから、工場を作り過ぎた、という状況に日本メーカーも、
実はなってしまっています。
アメリカは、最大の市場でしたが、どうも、この1月2月で、
中国に抜かれたようだという話です。
1600万台と言っていた市場が、1000万台を切ってきたので、
ここになって突然、アメリカより中国の方が、自動車が沢山売れる、
という話になってきました。

自動車業界としては、BRICsが成長市場で、ここに一生懸命工場を作って、
売ろうと思っていました。
しかし、BRICsも国内というより、海外に対する輸出で、
伸びてきたところがあります。現在、海外の輸出は大変な状況で、
買ってくれていたマーケットがおかしくなっています。
さらに株式市場が2007年の秋位には、6000兆円位あったものが、
3000数百兆円も下落したという状況ですから、
世界中でお金がなくなってしまいました。
インドでは、20万円位の車を作って売ろうという計画もあります。


■環境対応車への補助と再建支援
ヨーロッパもアメリカも日本も、政府は環境に対応した車を作るためだったら
補助金を出すと、ずっと言っています。
これからの世の中の流れは、環境対応車です。
それは、出来るだけ、一生懸命やってくださいということです。
もし自社だけで開発できないのなら、税金を使ってでも、
補助金を出すと言っていました。
ところが、アメリカでは、GMやクライスラーが、
資金繰りの悪化で破綻するかもしれないので、
環境車開発に向けた補助金を出す前に、お金をくださいと言い始めました。
そこで巨額の資金を年末に支援し、2月末の再建計画で、
さらに追加支援をしました。
しかし、再建にはまだ足りないということで、追加支援を求めています。
GMは最初に94億ドルもらって、再建計画後に、
40億ドルの追加支援をもらったので134億ドルも支援してもらったわけですが、
さらに166億ドル追加して、全体で300億ドル、
3兆円位支援してくださいと言っているのです。

これで自動車業界ナンバーワンのGMが破綻したということになったら、
また、ニューヨークも日本も株は下がるに決まっています。
しばらく注視していかなければならない問題のようです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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