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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 雇用保険と雇用の安定(財務戦略村藤 功)

雇用保険と雇用の安定(財務戦略村藤 功)

09/03/06

■世界の雇用情勢
あらゆる業界で雇用情勢が悪化しているので、
今回は、雇用情勢のお話からさせていただこうと思います。
まず、世界の状況です。
アメリカもヨーロッパも大変なことになっています。
アメリカ企業の人員削減計画だけでも、今年の1月段階で24万人に上り、
過去最悪だった2002年以来、7年ぶりの高水準という状況です。
ヨーロッパもユーロ圏10ヵ国の失業率が、2008年の12月に8%ほどになり、
スペインは14%とひどい状況です。
もともと、不動産市況の低迷で、東ヨーロッパや南米から流入してきた、
労働者の雇用が悪化していたということも、この背景にあります。
ヨーロッパは自動車産業も盛んですが、
ドイツもフォルクスワーゲンがダメージを受けていますので、
7.2%位の失業率です。
フォルクスワーゲンも国内工場の従業員の3分の2に当たる、
6万人の勤務時間を短縮している状況です。
しかし、短縮しても政府がある程度面倒を見てくれるということで、
時短による減収分の6~7割はドイツ政府が補填します。
働いている人にとっては、収入の9割位が確保されている、
ワークシェアリングというものです。

そして日本ですが、代表的なトヨタ、ソニーが大変なことになっていて、
それ以外にも、NEC、日立も厳しい状況です。
NECは、今年中に2万人位削減すると発表しました。
今年3月末に発表される一年の決算は、
2,900億円位の赤字になりそうだと言っています。
日立も、今年の3月末は、7千億円位の連結赤字となりそうです。
全体の55%を持つ半導体ルネサステクノロジーの赤字や、
薄型テレビの赤字が大きいという状況です。
その他、パイオニアがテレビ事業から撤退する、
東芝も大変な状況になっているなど、様々なことが報道されています。


■雇用保険と保険料率
そういう中で、労働者が会社をやめなければならなくなった時は、
当然、雇用保険が発生してきます。
製造業の生産自体が、10%~20%減少している状況の下で、
作る必要がないのなら、従業員を辞めさせていいのではないか、
という話が出てきます。
そういった状況でも雇用保険があれば、解雇される人を助けてあげられる、
安全弁やセーフティネットとなりえます。
しかし雇用保険についての考え方が、今少し問題になってきています。
もともと雇用保険にはお金が余り過ぎているのではないか、
という話が大勢でした。
雇用保険は、誰がお金を払っているかご存知でしょうか。
国もお金を負担していますが、国だけでなく、働いている労働者と、
それから労働者を使っているその会社の、3つで払っているわけです。
国は全体の14%程度の1,600億円位を労働保険特別会計に毎年払っています。
2008年春までの雇用情勢の好調で、雇用保険の積立金残高は、
約6兆円に達しました。
そのため余裕があるなら国が払う必要はないのではないかと提案したわけです。
ところが、経営側も労働者側も、一体何を言っているのかと猛反発しました。
国がお金を全く払わないのなら、国が雇用保険制度を運営する意味がない訳です。
しかしそのようなことを言っている間にリーマンショック以降の雇用情勢の悪化で、
大騒ぎになってきました。
今までは、お金が余っているのではないかと思われていた雇用保険も、
ひょっとすると、あっという間にお金使い切ってしまうのではと心配になってきました。
国がお金を払わないという話は、どうもなくなったようです。

雇用保険が適用される範囲、どういう人が雇用保険で守ってもらえるのか、
ということも問題です。
これまで、雇用保険の対象になる人は、週に20時間働いて、
雇用の期間が1年以上の労働者となっていました。
ところが、現在、派遣や請負などの非正規社員がかなり切られていますので、
もっと早急に守らなければならない人たちがいるという議論になり、
雇用見込み期間が1年でなくとも、半年以上の労働者には、
雇用保険を適用しようという話になってきています。
それから、失業給付も60日位を、上乗せしようという話です。

保険料率も、お金が余っているので、雇用保険を国が払わなくていい、
という話と一緒です。
皆、お金を少し払うだけで足りるはずだという話で、
2009年度に限って雇用保険料率を1.2%(労使折半)から、
0.8%(労使折半)に引き下げることで一旦は合意したはずでした。
ところが、引き下げられて負担が軽くなるにも関わらず、
労働者側が引き下げに対して、「雇用保険料率引き下げの裏に、
国庫負担廃止がある」とみたため、引き下げない方がいいのではないかと反発し、
ちょっとした騒ぎになってきています。


■春季労使交渉
経団連と連合が、春季労使交渉を始めました。
経団連、雇用側は、賃上げなどあり得ず、人をクビにしないことが、
精一杯だと言っています。
しかし連合はベースアップしろ、ということを言っていますので、
簡単には折り合いがつきそうにありません。
交渉の最大の焦点は、どの程度雇用を守れるかという、
ワークシェアリングのような制度を導入できるのかというような話です。
これは、もともとヨーロッパで広まったもので、
労働者が少ししか働けないけれども、経営者は誰もクビにせず、
政府が労働者の所得の減少分を減税によって一部補填してあげる、
というような、政府、経営者と労働者が皆で雇用維持に取り組む仕組みです。
日本では、労働組合が、これまでどちらかというと、
正規労働者のことばかり考えてきて、ワークシェアリングで、
非正規労働者を守るということを、あまり考えてきませんでした。
しかしそうも言っていられないという状況に、最近なってきています。


■政府の緊急対策
政府も色々なことをやっていますが、最近フレクシブル支援センター、
という事業を始めました。
高齢者の介護と子供の保育を今まで別々でやっていたわけですが、
これを1つの施設にまとめて、二つを一体で手がけるものが、
フレクシブル支援センターです。
これを今年中に地方自治体と一緒に3千ヶ所ほど作ろうという話です。
そこで、フレクシブル支援センターで5~10人程度を雇おうということで、
失業対策に使おうという話が出ています。

私見ですが、雇用のオポチュニティーが一番大きいのは、社会福祉関係なのです。
今の日本の状況は、政府が独占して社会福祉関係のサービスを、
握ってしまっています。
これを規制緩和して、民間が社会福祉とサービス業を自由にできるようにすることが、
一番重要だと思います。
そこに、本当の雇用拡大に対する最大のオポチュニティーがあると思っています。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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