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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 中国の4兆元景気刺激策とビジネス(中国経済と産業/国吉 澄夫)

中国の4兆元景気刺激策とビジネス(中国経済と産業/国吉 澄夫)

09/02/16

■中国経済の構造的な課題
中国の経済について今回はマクロな視点からお話ししたいと思います。
米国発の国際金融危機の影響は、世界同時不況となり、
中国に対しても様々な影響を与えています。
中国政府は、昨年の11月9日に総投資額4兆元
(日本円換算でレートによって変わりますが、53兆円から57兆円位)の、
大変大きな内需拡大策を発表しました。
その中身とビジネスの関係を考えていこうと思います。

まず、中国の経済の構造的な課題というのは、何でしょうか。
それは、GDPに対して輸出入の比重が、
日本や米国とは比べものにならないほど、大きいということです。
つまり、外需依存の比率が高いというわけです。
例えば、GDPに占める輸出は38%、輸入は29%で、
合計67%という数字ですね。
これは、日本やアメリカの20%台に比べ、
異常に大きいということがお分かりだと思います。
それから、欧米市場に対する依存率です。
これも38%に迫る、40%近い数字になっています。

そこで中国の政府のトップは、以前からアメリカ向け輸出の何割かを、
ASEANの方に振り向けなければならないと言っています。
アジアを重視して、30%はASEANにしなければ、
と兼ねてから言っておりまして、実はこれは実現しています。
それからまた、温家宝首相は、昨年の9月の早い時期から、
2008年は中国の経済発展にとって、この数年、
最も困難な一年であるというような発言をしていて、
危機意識を非常に強く持っていました。
去年は年初に、南部で大きな雪害がありましたし、
それからチベット暴動、地震もありました。

それから、製造業中心にして、輸出が大幅に落ち込んで、
広東省等で企業倒産件数が6万から7万件位増えたということです。
オリンピックを間に挟みながらも、成長の鈍化が見えてきたわけですね。
そういうこともあって、強い危機意識を持って外需依存から内需主導へと、
こういう転換を図ってきたということがあると思います。
そうした危機感を背景にして4兆元、つまり57兆円ほどの、
景気刺激策を打ち出しました。


■景気刺激策の中身
その中身ですけれども、国家発展改革委員会が、
発表しているものを見てみますと、約45%が交通や電力など、
インフラ投資です。基本は国家プロジェクトですね。
それから、25%が四川省の大地震の復興事業に、
9.3%が農村の民政安定やインフラ作りに、
8.8%が都市の汚水やゴミ処理等の環境や生態系の改善に、
当てられています。
更に、7%が低所得者向けの住宅建設と、
非常に具体的にその用途を書き出しています。
それから、地方の省や市政府も、独自の景気刺激策を、
この中央政府の動きを見ながら示唆しています。
こうしたものを足していきますと、30兆元、約400兆円という、
大変な額の規模のインフラ建設や投資促進の事業が、
中国の中で動き出しそうな、そういう気配があります。

ところで、依存度が高い貿易に関してはこの景気刺激策では、
扱われていません。
一時期、外貨保有量がどんどん増えていったということがあり、
輸出に対して増値税の輸出還付という制度、つまりVATの率を、
輸出削減のために下げたりした時期がありました。
ところが、9月以降にそれをやめて、
もう一回還付率を上げると発表しました。
こういうことで、輸出促進の対策を行っています。

これらはビジネスの観点で見ると、世界経済が冷えこんでいく中で、
中国の内需拡大と貿易も促進すると、言っているわけですから、
ビジネスチャンスと捉えることができますが、そう単純でもありません。
手放しでそう言えるのかというと、なかなか難しいわけです。


■中国経済の懸念材料
というのは、まず中国経済は世界の景気動向とリンクしていますので、
世界同時不況が進めば、中国だけが継続して成長を維持するというのは、
なかなか難しいのです。
それから、よく言われているGDP成長率の8%という数字です。
これは、中国が毎年の新規雇用を吸収して、
社会の安定を持続していくデッドラインだと言われています。
しかし、この2009年にこのバランスが崩れてしまうのではないか、
と言われています。
崩れてしまうと、失業者が増大するという、課題を抱えていまして、
現在その瀬戸際にきています。

2つ目は、先ほど申しました景気刺激策です。
一定の効果を発揮することは間違いないと思いますが、
かつて、中国で行われていた中央政府のマクロコントロール、
これを離れて地方がどんどん暴走していくという懸念があります。
自分の地方で色々な計画を出して、裏付けのないような投資案件が、
どんどん増えていくことになると、ビジネス界に、
大きな混乱を生じる危険があります。
これは、中央と地方の問題という、いつも圧し掛かってくる重い問題です。
中央政府が言っている通りに地方が動かないという、
そういう課題を過去もお話ししてきましたが、
この時点でも、そういう気配がします。

そういう意味で企業経営の立場からすると、このような流動的な時期に、
市場の動きを見る冷静な目が必要ですし、ここぞという時に踏み出していく、
胆力、決断力のようなものが求められている時期ではないのかな、
というふうに私には思えます。

分野: 国吉澄夫教授 |スピーカー:

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