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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ビッグ3の救済(財務戦略/村藤 功)

ビッグ3の救済(財務戦略/村藤 功)

09/01/16

■つなぎ融資
ビッグ3といっても、フォードはすぐに倒れる、
という状況ではありません。
とりあえず、GMとクライスラーをどうやって助けるかという話です。

救済案として民主党は金融安定化法の資金が70兆円もあるのなら、
それを使おうと言っていました。
しかし既に法案が成立している環境対応車開発向けの融資枠を、
前倒しで使おうとブッシュ大統領が主張しましたので、
それでいきましょうと民主党も了承しました。
ところが今度は、共和党が反対してしまい、
前倒しの使用は不可能になりました。
そのため倒産したら大変だと大混乱になり、
最初から民主党が言っていた金融安定化法の資金を一部使って、
とりあえずつなぐということを年末に決めました。
これが、つなぎ融資というもので、
GMとクライスラーの2社に対して、
134億ドルのつなぎ融資をするという話です。

GMとクライスラーは環境対応車開発向けの融資を悠長に待っていたら、
年末までに資金繰りが破綻する危険があったので、
とりあえず緊急融資でお金を下さいということを言いました。
それが去年の末です。
仕方がないので、環境対応車開発向けの融資枠を、
前倒して使おうとしたら、前倒しは許さないということになり、
銀行を助ける予定だったお金を流用して使う、
ということにひとまずなったわけです。


■ビッグ3の再建計画
以前から言われていた、経営幹部にボーナスは支払わない、
株主に配当を払わない、保有するジェット機を売る、
など金額的に小さい話は、すんなりと了承されました。
しかし、もめそうな話が2つ残っています。
債務の株式化をしなさい、それから人件費を下げなさい、
という2つです。

まず債務の株式化です。
どこの業界でも同じですが、事業を行う際には借り入れと、
株を発行する自己資本の2つで資金調達をしています。
ところが、政府が助ける前提として、借り入れが多すぎるので、
無担保債務の3分の2を、株式化をするよう、
債権者にお願いしなさいと指示しました。
しかし、株式化を引き受けてくれる債権者が本当にいるのか、
ということが問題です。
お金を貸しているのは、銀行や取引先などですが、
その債権を株式に変えるということです。
これを同じ価値の株に交換するのなら、納得できるかもしれません。
しかし、交換した株の価値がなくなってしまうのであれば、
損をすることになり、簡単に了承するかは、かなり怪しいです。

もう1つは、人件費の問題です。
GMやクライスラーの工場は、多くがデトロイト周辺に位置しています。
デトロイト周辺の給料は大体1時間当たり70ドルです。
一方で日本の自動車工場は、アメリカの南部にあって、
1時間あたり50ドル位しか払っていません。
アメリカの自動車会社が日本の自動車会社と競争するためには、
労働コストを同じにする必要があるという主張があり、
共和党が1時間当たり50ドルに下げなさいということを言っています。
これは、たまたま、アメリカの自動車会社の方が、
20ドル高いお金を払っているだけではなく、
地域的な賃金格差の問題でもあるため問題が複雑化しています。
デトロイトは北部で70ドル払っていますが、
南部の方は給料の水準が低くて、50ドル位となっています。
しかし、デトロイトに住んでいながら50ドルしか払わない、
ということになると、デトロイトの今までのマーケットレベルからは、
大きく下がってしまいます。
それに加え、南部と北部の戦いにもなってしまっていて、
南部の人たちが、彼らの給料を下げなければ、
我々の税金を使うなと主張し始めています。
単純に日本の企業のレベルに下げればいいという話ではないため、
労働組合は話がおかしいと言って反対しており、
簡単に決着が付きそうではありません。


■オバマ政権への引継ぎと自動車不況
資金を一時的に供与した後の中長期的な救済案は、
今後、次期アメリカ大統領のオバマ政権で実施されることになります。
1月20日からオバマ政権になってしまいますので。
とりあえず、ブッシュ大統領は自分の任期中に自動車業界が破綻して、
お前のせいだというふうに言われるのが嫌なので、
とりあえず次につないで、後はよろしく、
とオバマ大統領に渡したということです。

今回のつなぎ資金供与の条件として、
3月末までに抜本的なリストラ計画を策定して、
もしそれが出来ないのなら、お金を返せということがあります。
お金を返せと言われたら、破綻してしまいます。
そうすると、飛行機業界が突入したような、
チャプターイレブンと言う、破産法11条の法律手続きを申請するという、
大変なことになってしまいます。
破産法手続きに入っているような会社から自動車は買わないだろうと、
GMは心配しています。確かに破産法の適用を受けている会社から、
消費者が自動車を買うかは疑問があります。
そうすると車が売れずに、更に大変なことになります。
3月までに本当に再建計画を策定して生き延びられるのかは、
不透明という状況ですね。

今回の資金供与でとりあえず生き延びさせたとしても、
その後、競争力を保てるかどうかは、怪しいと思われます。
今までも、日本の自動車企業に対抗するために、
小さくて環境にいいような自動車を作らなければならない、
ということを言っていたのに、なかなか出来なかった、
という過去があります。
ちょっと資金をつないだからといって、
競争ができるようなものになるのかというのは心配です。

アメリカだけでなく、世界的に自動車市場が、
困ったことになってきているという状況もあります。
アメリカでは、去年2008年の自動車の販売台数といのうのが、
ざっくり言うと20%位下がりました。
ヨーロッパでは、10%位下がって、日本では5%ほど下がりました。
簡単に言うと、20%、10%、5%の下げで、
アメリカ、ヨーロッパ、日本がやられています。
そんな状況の中で、今まで神様というふうに言われていた、
日本のスーパースター、トヨタも赤字、
ホンダも赤字という状況になってきました。

トヨタは、2008年度の上期だけで5800億円の営業利益を出しています。
しかし後半の赤字でそれを食いつぶして、
通期では赤字になりそうな気配です。
そもそも、この不況はアメリカだけだろうと笑っていたら、
そんな状況ではなくなり、世界の自動車産業は不況に、
どう対応するのかという緊急事態になってきました。
日本の生産台数と販売台数はどの程度違うのかご存知でしょうか。
簡単に言うと、生産は1000万台、販売は500万台です。
日本で販売する車の約2倍位生産していることになります。
半分は、国内で買ってもらい、半分は輸出しているという状況です。
日本メーカーは国内だけで買ってもらうために生産しているわけではなく、
半分は海外で買ってもらわなければなりません。
そうすると、アメリカで、20%減少、ヨーロッパで10%減少、
ということになると笑えません。
トヨタも日産もホンダも大変という状況です。
1月20日にオバマ政権がいよいよ発足しますが、
その後、どこまでビッグ3を救済できるか、
というところがひとつの焦点になりそうです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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