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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 資源開発と資源値下げ(財務戦略/村藤 功)

資源開発と資源値下げ(財務戦略/村藤 功)

09/01/02

■ 原油価格の急落
あけましておめでとうございます。
本日は資源値下げについてお話しします。
思い起こせば、昨年の初めに、ニューヨークの原油市場が高騰して,
百ドルを超えて、どうなってしまうのかというお話をしました。
その後、原油価格は急上昇したかと思えば、
また下がってしまいました。
2007年7月の頃がピークで147ドルくらいまで上がりましたが、
今ではその3分の1以下になってしまったという状況です。
今年は2、30ドルまで下がるのではないかという説もあります。

そのような状況で中東の産油国を中心に、
とにかく減産、減産ということになってきています。
サウジアラビアの歳出は3年前に比べて5割増になりましたが、
歳出予算は1バレルあたり50ドルを仮定して作っています。
しかし既に50ドルを切っていますので、赤字見通しとなっています。
なんとか値段を上げたいということで、減産している状況です。
アメリカ発の金融危機で、世界中が不況に陥り、
中国やインドまでダメという状況ですから、
原油を使う量が激減してしまいました。
みな使ってくれず在庫がはけないので、
大西洋上でタンカーが原油を降ろさないで待機している状況です。
また、儲かるだろうと思って投機資金を投資していた投資ファンドも、
運営が行き詰まってきたので、とりあえず現金化しようと、
原油市場からお金を引き上げてきています。
これでは、価格はもう下がる一方、という状況ですね。


■ 原油価格変動の産業に与える影響
レギュラーガソリンの1リットルあたりの値段自体も、
去年の夏ごろは180円ほどあり皆で怒っていたわけですが、
今では100円くらいに下がってきました。
昔の値段に戻ってきたという感じです。
しかも、これが短期間に起こりましたから、
怒りのこぶしを振り上げたと思ったら下がってきてしまい、
何か釈然としません。

この状況は喜んでばかりもいられません。
色々なものの値段が上がったり下がったりすると、
皆それに対応しなければなりません。
対応というのは大体の人が遅れてしまいます。
対応に遅れると損をすることがあります。
例えば、原油が上がったり下がったりすると、
そこからできるガソリンやナフサ、
重油などの価格が上下します。
ナフサ価格も、7月のピークに比べて、
去年の11月には5分の1程度まで下がってしまいました。
ナフサからはプラスチックのような樹脂が作れます。
化学メーカーとしては、ナフサが高いからと言って、
顧客に値上げを迫りようやく値上げをしました。
ところが最近では、プラスチックを買ってくれる顧客から、
原油が下がったから、上げた値段を下げろと言われています。
これに対応してあまり早く値下げを実施してしまうと、
もともと、値上げを遅れてやったために、
価格を上げるまでに発生した損失を取り戻すことができません。
遅れて値下げしてはじめて損失を取り返せるわけです。
原材料価格が上下する時には、
どういうタイミングで自社製品の価格を上げたり下げたりするのか、
ということが重要です。


■産油国に与える影響
中東は去年の前半辺りは、原油バブルでした。
原油売り上げのバブルで、何十兆もの金が儲かるということで、
総額2兆ドル、200兆円くらいのプロジェクトが発足し、
ホテルを建てたり、海の中に人工島を作ったり、
世界一高いビルを作ったりしました。
バブルで遊んでいるのではないかと思われるくらいだったものが、
原油の値下がりで急遽プロジェクトがストップしてしまい、
下手をすると鉄骨がむき出しのままで止まってしまう状況です。
原油の値段も随分下がり始めたので、値下げをとめるべく、
9月に日産50万バレル減産し、11月に日産150万バレル、
12月に日産220万バレルの減産を追加しました。
合計で日産420万バレルくらい減産しましたが、
あまり価格下落に効き目はないようです。
日産420万バレルというのは、世界全体の生産量の5%ほどです。
しかし、世界景気が減速して買い手が減っているので、
価格の下落は更に続くかもしれません。


■鉄鋼原料の値下がりと鉄鋼価格への影響
鉄鋼でも鉄鋼石や、石炭など鉄を作る材料が上がって、
大変なことになっているという話を、以前させて頂きましたが、
これがまた下がってしまいました。
原油と一緒です。とてつもなく上がっていたものが、
またとてつもなく下がってきました。
一時、鉄鉱石の値段は1トン当たり150から200ドルでしたが、
それが5分の1の40ドルほどに下がってきました。
少し前までは中国やインドなどBRICs各国が、
作るものはいくらでも買うという状況で、
資源大手のリオ・ティントやBHPビリトンなどは強気でした。
しかし世界同時不況で買ってくれなくなり、
あっという間に需要が減少し、
鉄鋼石も石炭も下がり始めたのです。

特にひどいのはスクラップです。
鉄には、2つの作り方があって、高炉からと電炉からがあります。
電炉とは何かご存知でしょうか。
高炉の場合、鉄鉱石や石炭を高炉の中にいれて、鉄を作ります。
電炉の場合、スクラップ(鉄くず)を買い集めてきて、
それを電炉に放り込んで鉄を作ります。
高炉は予定通り大量に鉄鋼を作るもので、
1年に1回くらいしか値段の交渉をしませんが、
電炉は原料のスクラップをかき集めてくるわけですから、
スクラップの市場価格はすごい勢いで上下します。
7月に1トン当たり7万5千円くらいだったものが、
11月初めには1万円を切って、
7分の1くらいになってしまいましたので、
スクラップは取引すればするだけ損をする、
という状況になってしまいました。

スクラップ価格が下がると、電炉の鉄価格が下がります。
そうすると、電炉も下げているのだから、
高炉も鉄の値段を下げろ、という話になってきます。
以前に、新日鐵やJFEが、トヨタや建設業者等に、
鉄鉱石と石炭価格が上がってきたので、
値段を上げさせてくださいと、3~40パーセント上げてもらった、
という話をしました。
しかし、今回は原料が下がってきたのだから、
当然鉄の価格を下げてくれるのだろうね、
という話になってきました。
建設業界は、以前3~40パーセント上げたのだから、
今度はそれだけ下げてもらわないと、
理屈が合わないと言って、鉄鋼会社を突き上げています。
トヨタも、一時、兆円単位の営業利益だったものが、
今年度赤字に陥りそうな状況になってきたので、
自動車用鋼板を3割程度下げろ、ということを言っているようです。
トヨタは年間に1兆円くらいの鉄鋼を買っています。
1兆円買っていて3割下げると、コストが3千億円下がる計算です。
1兆円の営業利益が0になったら、鉄鋼価格を下げてもらうと、
3千億円も営業利益が戻ってくるというような大変な話です。

トヨタと新日鐵が合意すると、
他の自動社会社や鉄鋼会社の皆さんもそれを見ながら、
トヨタと新日鐵が決めた値段でやるかという話になってきます。
この影響はすごく大きいわけです。


■2009年の展望
自動車産業は世界中で困ったことになってきています。
特にGM、フォード、クライスラーなどの、
ビッグ3を持つアメリカがひどいですが、
トヨタもアメリカだけでなく国内でなかなか買ってもらえなくなり、
赤字というような状況になってきました。
そうすると、鉄鋼の需要が減少しますので、
鉄鋼会社が高炉を止めよう、というような話が出てきています。
高炉は一旦止めると、また再開するのが大変なので、
なかなか止めません。
しかし遂に少しストップしようという話が出てきました。
このように2009年は不況による資源値下がりの影響が、
どういうふうに出てくるのかというのが、ひとつの焦点です。
資源値下がりは結構ですが、不況は困ります。
皆で人員削減を含め色々な対応をしなければならないでしょう。
厳しい状況が続きそうです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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