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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > なぜ、今、戦略的提携なのか。(国際企業戦略論/永池 克明)

なぜ、今、戦略的提携なのか。(国際企業戦略論/永池 克明)

08/12/23


■戦略提携の重要性増大の背景にあるもの
前回はグローバル時代の戦略的提携、
というお話をさせていただきました。
本日は、実際の経営戦略の中で、提携というのものが、
今日どうして重要性を増してきたのか、
その背景についてお話をさせていただきます。

グローバル化の進展により、戦略的な提携というものが、
非常に重要性を帯びてきました。
戦略経営の中の、大きな手段の一つとして、
重要な意味を持つようになってきたということです。
まず、企業の設備投資が非常に巨額になってきている、
ということがあります。
戦略提携の一つとして、単独の会社では、
なかなか賄えないような毎年の投資額を、
他社と分担するということがあります。
これによって企業は設備投資を節約し、
しかも、成果を両社で共有するというメリットを享受します。

また、研究開発の面においても、
単独の企業が保有する技術開発力だけで、
全てを賄うことに限界が出てきています。
従って、二つ目の戦略提携の方法として、
他社の知的財産を活用して、技術の融合化や、
複合化などを図り、付加価値を創出していく、
ということが必要とされています。
開発や生産、ハードやソフト、設計やシステムなど、
そういった色々な面で提携の必要が出てきています。
半導体でいえば、ウェハー工程と組み立て工程などで、
お互いの力を活用し合うということが、
必要になってきているということです。

第三番目として、製品のライフサイクルが、
年々短縮化してきていることです。
例えば、ノートブックパソコンでは、
三ヶ月毎にどんどん新製品が出ていきます。
その中で、競争していかなければなりませんので、
それに伴って開発期間が非常に短くなり、
値崩れする前に早く売ってリターンを得ようとしています。
開発するために使った投資の見返りを早く得なければなりませんので。
企業によっては、1社で開発するのは厳しいわけです。
そういうことで、提携をしてスピードを買うということを行っています。

それから、四番目として、システムソリューションというものがあります。
最近では顧客のニーズが非常に多様化して、
色々な分野にわたり、多様化してきています。
そこで色々なものを組み合わせて、
複合した形でのソリューションを考えなければならない状況になっています。
例えば、ハードウェアだけだった企業が、
ソフトウェアも一緒にやっていかなければならないとなると、
困ってしまいます。
そこでソフトウェアの会社と組むということがあります。


■グローバル化で生き残るための戦略的提携
最後になりますがグローバリゼーションの影響です。
事業というものは、それぞれの国によって、
得意分野が違います。
例えば、アメリカでは、シリコンバレーのように、
IT関連分野が得意ですし、通信(テレコミュニケーション)だと、
ヨーロッパ、製造だとアジア、あるいは、部品・素材だと日本。
といったように世界で最も強い地域があります。
グローバル競争に打ち勝つには、
企業はそれぞれの機能を世界の最適地に立地させて、
そこの企業同士が提携することによって、
世界のベストを狙うということもあります。


■戦略的提携のかたち
ドズ・ハメルの説によれば、戦略的提携には三つのかたちがあるといいます。
まず、一つ目は、似たもの同士、あるいは同業他社が集まって、
力を発揮するというやり方です。
例えば、水平的な提携というようなことで、Co-optionというものがあります。
これは一つの分野で強い者同士が集まって、もっと強くなることです。
例えば、ディファクトスタンダード(業界標準)を勝ち取るために提携する。
最近の例では、次世代DVDで、ブルーレイディスクと、HDDVDと、
この2つの方式が世界を二分し対抗しました。
結局、ブルーレイディスク陣営が勝利を得ました。
このようなディファクトスタンダードを争うような製品では、
それぞれ、「この指止まれ」というように、
仲間となる企業や顧客を沢山集めたものが勝ちます。
結局、多数派工作に成功したものが、
ディファクトスタンダードを握ることになるわけです。
このように世界では、市場を支配する提携というものが、
色々な面で行われつつあります。
携帯電話もそうです。
ノキアの方式が結局、多数派を形成できたわけです。

また、色々な垂直統合も行われています。
事業には川上から川下までの流れがあります。
そういったものを全部、自社でやっていこうというのは、
なかなか難しいことです。
たとえば、半導体では半導体の装置と、半導体そのものを作る企業、
システムソリューションを考えるような企業とで提携し、
川上から川下までカバーすることによって、
最強の軍団を作っていくという提携も行われています。
例えば、ごく最近の例では、NTTドコモが、
韓国の携帯通信の大手のKTフリーテルという会社と国際戦略提携をしました。
そして、グーグルの無償ソフトを採用して、
パソコン並みの性能を持つ多機能電話、
スマートフォンというものを開発しようとしています。
これは2009年に開発から出そうという予定です。
iPhoneに対抗しようということです。

第二のかたちとしては、自分たちができないことを、
他社と組んでやるというような方法です。
これをco-specializationと言います。
足りないものを補い合ってやっていくということです。
例えば、ソニーや東芝は、液晶テレビを、台湾の企業、
EMS企業に委託生産しています。
それから、ソニーでは液晶素材である薄型のパネルを、
サムスン電子との合弁会社とシャープから供給を受けています。
東芝もシャープから委託生産ということをしていますので、
結局、中核事業と位置付けたものは、とことん自社でやりますが、
そうでない事業は、割り切って外部から調達する、
ということが行われています。
グローバルな世界で勝ち残っていくためには、
このような提携の戦略も有効になってきますし、
そういったことをやらなければなりません。
また、その昔、トヨタは初のアメリカ進出を果たすために、
GMと米国で合弁会社を作り、
小型車生産とトヨタ生産方式をGMに教える代わりに、
GMの販売ネットワークや米国政府への交渉を活用して成功させました。

第三のかたちは、learning(学習)です。
これは一方の会社が一方の会社から学ぶ(有償で)という提携です。
技術ライセンスや技術供与です。
双方が学びあうということになると、クロスライセンス契約となります。


■戦略的提携の重要性と今後の展望
提携の理想は、最終的に提携した同士がWIN-WINになることです。
そのやり方として、M&Aという選択肢も当然あります。
昨今では、むしろM&Aの方が、新聞紙上を賑わしていますが、
戦略的提携という形も必要です。
やはり、企業が両方の選択、つまり、買収と戦略的な提携という、
二つの手段を戦略的に上手く組み合わせながら、
自分のポジションをより強くしていくということが大切です。
一社単独では限られている経営資源を、
様々な手法で補っていくということが、
企業の競争戦略の中で非常に重要になってきている、
ということが言えます。

日本の電機業界は、まだまだメーカーの数が多いので、
特に今の経済状況を考えると、この数年で、
ますます再編が加速していくと思われます。
丁度、パナソニックと三洋というような、大手の会社企業同士が、
もっとコンバージェンス、つまり収斂していく、
おそらくこのような形のプロセスが、これから否応なく出てきます。
その時の手段が、M&Aか、あるいは戦略的提携か、
どちらになるかは分かりませんが、
その時々に応じて上手く使い分けていくことになるでしょう。
馴染みの企業名が無くなっていくことが少し寂しいという方もいるでしょうが、
グローバルな競争の中で、日本企業が勝ち残るためには、
強い企業が日本で数社というようにならないと、
なかなか勝てないという時代に、やはりなってきたのでしょう。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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