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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > GMと自動車業界(財務戦略/村藤 功)

GMと自動車業界(財務戦略/村藤 功)

08/12/05


■ビッグ3の状況
今日は、GMと自動車業界というテーマでお話させていただきます。
アメリカのビック3が大変なことになっています。
フォードは、比較的大丈夫なのですが、GMやクライスラーは、
政府が助けてあげないと、
今年中に潰れてしまうかもしれないというような状況です。

今春以降、GMの懐からは、
毎月約10億ドル(約1千億円)の現金が流出する状態になっており、
GMの手元資金が、九月末には160億ドルしかなくなってしまいました。
最低運転資金として110億から140億ドル位は必要だといわれているので、
今年中に、不足して破綻するかもしれない話になってきています。
特にGMが垂れ流している金額は、リーマン破綻以降、
急速に増え始めましたので、助けを出さないと危ないと状況です

GMの財務状況は債務超過が6兆円位となっています。
そのためS&Pの格付けが、この時点でBマイナスとなってしまいました。
これは、投資をしても3、4割位の確率で債務不履行になって、
貸出しや債券のお金が返ってこないという水準です。
債務超過ですから、皆さんは新規投資をしない方がいいですね。

この11月に、どれだけ大変なのかを聞くために、公聴会を行いました。
しかし、そこにビック3のCEOたちが、
皆、自社用ジェット機で乗りつけたということで、
一般人に大変な反感を買ってしまいました。
助けてくれと言っている人たちが、なぜ自社用ジェット機で来るのか、
という非難を浴びて、あわてて自社用ジェット機を売り始めました。
GMは全部で7機あったものを、2機ずつ売りましたが、
まだ2、3機残っているようです。
昨年、フォードは、2~3千億の損失を出したにも関わらず、
CEOのムラーリーは20億円位の報酬をもらっていたそうです。
それで、また反感を買って、1ドルにしなさい、ということになりました。
結局3人のCEOがそろって自動車でやってきて、
3人とも年収1ドルとした再建計画を、12月2日に提出しました。


■ビッグ3救済法案と再建計画
このような状況で、自動車業界の救済法案はなかなか通りません。
自動車会社のトップが、自社用ジェット機で助けを請いに来たり、
何十億円も給料をもらっていたりするわけです。
アメリカの金融が破綻した時に、
一般の住宅ローンも払えない人たちにとってみれば、
我々の税金を、なぜお金持ちの人たちに使うのか、
と言ったことと同じ話です。

ただ、本当にアメリカの自動車産業を潰してしまってもいいのか、
ということです。
放置しておくと、このままアメリカの自動車産業が無くなってしまうほど、
大変なことになってきました。
民主党も、公聴会でのCEOのあまりの感性のなさに怒って、
再建計画を12月2日に持ってきなさいと言って、
一度追い返しました。
それで12月2日に、3社とも再建計画を出しました。
とりあえず、潰してしまうと、大変なことになりますから。
潰す選択肢は無いというようなことを、民主党のペロシ下院議長が、
一応言っています。
なぜなら潰してしまうと、何十万人もの雇用に影響が出ると見られているからです。

GMだけでも、現在十万人ほどの従業員を、
3~4年かけて2~3万人程度削減する再建計画を提出しています。
また、アメリカに、47ほどある工場を、38工場に減らす、
ということも予定しています。
工場を減らして、従業員も削減するということをしないと、やっていけない状況です。


■人々のライフスタイルの変化と自動車
一時、原油価格が上がって、1バレル140ドルを超えましたが、
今では3分の1位の、50ドルを切ってしまうような、
ジェットコースター状態です。
価格が上がった時に、大型車に乗るのをやめよう、
車も乗らないで列車やバスにしようということになり、
突然人々が公共交通機関に乗り始めました。
そのため自動車を買わなくなってしまった人もいるわけです。
こうして買わなくなった自動車を、また将来、
買うようになるのかということが問題です。
GMの提出してきた再建策では、来年の自動車市場は、
1200万台ほどに縮小しますが、また1500万台程度に戻ってくる、
というシナリオを想定しています。
そのシナリオが実現せず、需要が戻ってこなかったら、
一体どうなるのかということが、重大な問題です。

打開策として環境対応車にシフトするというのも、1つです。
少なくともハイブリッドや、電気自動車、ガスで走る自動車など、
環境に優しい自動車の開発をしなければならない方向性は、
もう変わりません。
ただ、アメリカの人々が車中心の生活を見直し始めた、
という問題は評価が困難です。


■世界の自動車業界への影響
日本は、当初、この危機は他人の話だと思っていました。
アメリカだけのことで、アメリカの在庫が積み上がって大変だな、
と思っていました。
しかし、あっという間に日本国内でも、
自動車販売が2~3割下落してしまいました。
株式市場が暴落したので、富裕層が高級車を買わなくなり、
さらに燃費性能がいいため好調に売れていた軽自動車も売れ残り始めました。

自動車産業はこれからどうなってしまうのかと、
世界中で大騒ぎになってきました。
金融危機で世界景気が悪化し、EUも困ったことになっています。
自動車が売れないということで、アメリカ政府だけでなく、
EUも自動車産業にお金を貸したいと考えはじめ、
自動車産業の騒ぎは世界に拡大してきました。
ただ、ヨーロッパの自動車会社は、まだ黒字は確保しているが、
これから赤字になる可能性がでてきたという状況です。

これまでGM等ビッグ3は、様々な形で日本のメーカーと組んできました。
いすゞやスズキなどです。
ところが、一緒にやってきた部門を、
合弁相手のいすゞに買ってもらおうという話がでています。
また、スズキは、今までGMに持ってもらっていた分を、
自社株として買い取るというようなことを始めています。
ビッグ3はとりあえずお金がないので、
色々なところに投資していたものを、
売らなければならないと考えています。
フォードも、ジャガーやランドローバー、アストンマーティンなどを、
売却しました。
99年に、スウェーデンのボルボを買いましたが、
これも売却の検討に入っています。


■今後の自動車業界の方向
環境対応車に移行させていくためにどうするかというのは、
政府の観点です。
アメリカでも、もともと3兆円ほどは、低燃費の環境に優しい車を開発するために、
お金を出そうという話をしていました。
環境対応車生産のための250億ドルの低利融資というのは、
既に法律が通っています。
ところが、GMやクライスラーが、それでは間に合わないと訴えています。
年末までに、緊急融資を受けないと危ないのです。
ではいくらか、と尋ねたら、250億ドルではなく、
340億ドル必要だと言っている状況ですので、
環境対応車への助成金の話をする余裕がなくなってきています。
環境にやさしい、環境対応車生産のために、
努力させるというのが政府の方向性ですが、
そうはいっても、とりあえず、公聴会を開いて、
金融支援の具体策を決定しようと計画しています。
基本的には潰さないようにしたいと言っていますが事態は予断を許さない状況です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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