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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 資本注入と世界の経済安定化策(財務戦略/村藤 功)

資本注入と世界の経済安定化策(財務戦略/村藤 功)

08/11/28


■今朝の日経と農林中金
今朝の日経によれば、農林中央金庫が、含み損1.5兆円を出し、
1兆円の増資をすることになりました。
これには、農林中金よ、お前もか、という感じです。
日本の中央金融機関が自己資本を増加しようということが、
最近多く聞かれています。最初はみずほ銀行や、
三井住友など、メガバンクの話でしたが、
野村證券も増資するということになりました。
中小金融機関には、政府から直接お金を入れよう、
という話になっています。農林中金も1.5兆円の含み損を抱えており、
今参議院で話し合っている金融機能強化法の資金を使って、
資金注入をしてもいいのですが、農林中金は農協などから、
グループ内でお金を入れさせようという計画のようです。


■国際協調
今日は、金融危機から広がった経済危機への対応についてお話します。
危機への対応策としては、まず世界各国が、
協調していかなければなりません。
最初は、G7という先進国の仲間内で何とかしようという話でした。
G7で、重要な金融機関の破綻を回避しようということを話し合いました。
アメリカがリーマンを潰して衝撃が連鎖したことを考えると、
シティのような巨大金融機関を同様に潰しては困るということです。
最近のニュースでシティの経営が危なくなったことが報じられていますが、
とりあえずアメリカ政府が助けるということになりました。
G7ではそれ以外にも、金融市場にお金が回るようにしよう、
それから、各国別に主要金融機関に、
自己資本を注入しようというようなことを決めました。

ところが、段々とG7だけではどうにもならないことが分かってきました。
このままでは、世界経済が大変なことになってしまうという危機感から、
新興国を入れた、G20というものが最近出来ています。
G20では、新興国も一緒になって話し合っています。
最近、経済の好調を背景に中国やブラジルなどの、
BRICsの発言力が強くなってきたためです。
G20の財務省中央銀行総裁会議や、最近のG20の金融サミット等では、
先進国だけでなく、途上国も巻き込んで対策を考えています。
中国は、4兆元、50数兆円のお金を投資することになりました。

APECは、Asia-Pacific Economic Cooperationですので、
日本や中国、その他のアジアの国々が中心という気もしますが、
アメリカ、カナダ、ロシア、それにペルーやチリ等の国々も、
太平洋に面しているので、彼らも加わって、
皆で金融危機に対して協調しようという話を広げました。


■アメリカの状況
騒動の発端であるアメリカはもうかなり滅茶苦茶な対策を打っています。
アメリカには、日本の日銀に当たるような、
お金を発行するFRBという機関があります。
このFRBのバランスシートは、2、3ヶ月前には、
100兆円位の資産しかありませんでしたが、
今はもう200兆円を超えてきていて、
年末には300兆円ほどに膨らむのではないかと言われています。
資産が膨らむということは、つまり負債のところで、
お金を発行しているということです。
アメリカ政府が山のようなお金を発行し、
これを使って色々な対策を打っているということです。
しかし、ドルの流通量が増えれば、ドルが弱くなったり、
インフレになったりということになりかねません。
ドルの場合世界中で使っているとはいえ、少し危険な状況です。

具体的に何をやっているかと言いますと、
先日、不良資産を7千億ドルで買取るという、
金融安定化法を成立させました。
これは不良資産の買取りのはずだったのですが、
それでは不十分だということが判明したため、
法律を通した後で、株という資産を買うのは同じだから、
金融機関に自己資本を注入しようということになりました。
そこでJPモルガンやシティ、バンカメなどに、
自己資本を入れ始めたというのが、当初の話です。

ところが、11月25日に、7千億を更に上回る、
8千億ドルの金融対策をFRBがまた発表しました。
これは77兆円ですから、とんでもない金額です。
以前からファニーメイとフレディマックを救済することを決めていましたが、
彼らの証券化された証券を買い取るのに6千億ドル、60兆円ほどを使います。
それから、アセットバック証券という、自動車ローンバック証券や、
クレジットカード・バック証券の市場向けに、
ニューヨークの連邦準備銀行が融資する2千億ドルもこの8千億ドルに含まれます。

事業会社も大変ですから、FRBが、事業会社が資金調達の為に発行している、
コマーシャルペーパーを買い取ることになったという話もあります。
これには、1兆8千億ドルの資金枠を用意しました。
また、信用不安を背景に銀行間の資金取引が滞り、
預金者も自分のお金が大丈夫か心配になっています。
日本でも1千万円まで預金が守られるというのがありますね。
銀行間取引に関する銀行債務のFDICによる保証、
決済性預金の保証、預金保険の増額はFRBの負債を、
1兆9千億ドル増加させる可能性があるといわれています。

77兆円の金融対策を発表した辺りから、
ダウ平均は4営業日連続続伸しました。
政府が対策を発表するたびに、市場は落ち着いたり上がったりしています。


■日本の対策
日本にはあまりアメリカの対策による安心感が伝わってこないのか、
日経平均株価はあまり上がっていません。
日本企業の決算発表が続々と出ていますが、
悪化している企業が多いため、株が上がるような状況ではないからです。

日本としてはそもそも、これはアメリカの問題で、
日本は大してやられてないということからスタートしています。
しかし、中小企業を守ってやらないとかわいそうだということで、
信金中金や、全信連のように中小企業を対象としている金融機関に、
自己資金を注入する、金融機能強化法を通そうという話になりました。
今は、まだ参議院で検討している段階ですが。
それから、株が下がる一方ですので、政府の保有株式や、
日銀や銀行保有株式取得機構というのが、
持っている株を売るのをやめようということを決めています。
また、政府に頼ってもいられないだろうということで、
みずほや、三菱UJF、三井住友銀行は、
自分で自己資本を増強しようという動きに入っています。
それで、はじめにお話ししたように、
農林中金も1兆円増資というのを発表したわけです。
ただこれはひどい話で、グループ内の農協や関係がある人たちに、
1兆円出してくださいという強制に近いお願いが行くことになります。
政府の資金に頼らないと言っていますが、
そうなると、農協は大丈夫なのか、という心配があります。


■EUの状況
世界経済の中ではEUの役割も大きいので、
ヨーロッパにも言及しておきます。
ヨーロッパは、アメリカの投資銀行にだまされて、
大きな証券化資産を保有させられたため、
結構大変なことになっています。
ただ、戦後ずっと唯一の超大国として、
アメリカに主導権を握られていましたから、
アメリカが大変になった現状を好機と見て、
ヨーロッパに主導権を取りかえそうという戦いを始めた国もあります。
特にフランスのサルコジ大統領は、
もうドルはダメなのでは、というようなことも言っています。

ヨーロッパでも、気になるのが、アイスランドですが、
アイスランドは銀行が10月に債務不履行に陥ってしまっています。
それで、イギリス政府とアイスランド政府で、
お互いに色々揉めていたりしています。
とりあえず、IMF主導で、60億ドル位のお金を注入して、
安定化させようという動きに入ってきています。


■新興国の動き
そして、最後に新興国の動きです。
新興国は、G20の話でも出ましたが、
これからは世界の枠組みの中で色々と発言をしていくつもりです。

特に中国は数年で日本を抜いて、
何十年かでアメリカを抜くというふうにもいわれています。
そんな中で、中国は2年で4兆元(57兆円位の)景気対策をする、
と発表しました。
これは8%位の成長率を守ろうということです。
今までは世界の工場として、諸外国に製品を売ることで成長していました。
しかし、海外の消費が落ち込んでいますので、
輸出ではなく、内需拡大に転換しようということです。
これは実は大変な話です。
そんな簡単に成功するとは思えません。
経済の成長を輸出に頼っていたのが、
そんなに簡単に国内で皆消費してくれるわけはありません。
しかし、4兆元(57兆円)は大変な額ですから、
これからどうなるのか注目する必要がありますね。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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