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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > アントレプレナーシップにおける地域性 (中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

アントレプレナーシップにおける地域性 (中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

08/11/11

■アントレプレナーが多い地域はどこか?
今回はアントレプレナーシップにおいて、
地域間で国と国によって色々違うという、
その差についてお話します。

まず、「皆さんにとって、最もアントレプレナー、
アントレプレナーシップ旺盛な地域
というのはどこですか」という質問をすると、
シリコンバレーと答える方が多いと思われます。
ここで1つご紹介するのは、昨年アメリカで出版された、
『アントレプレナーシップに対する幻想、勘違い』
という1冊の本です。この本を書いたのが、
この分野における大変有名な研究者である
スコット・A・シェーンです。

アメリカ、シリコンバレーというのは、世界の中でも、
非常にアントレプレナーを創出していくような地域
として注目されています。しかし、現実問題として、
果たしてそれを支持するようなデータがあるのか
という1つの問題があります。
先程のシェーンの研究によりますと、
例えば人口調査のデータの中に、
新しいビジネスをスタートする人口を
1世帯あたりで計ってみると、
アメリカ全体に限っていうならば、
83年が14%、2004年には11%にまで減少しています。
これをその他の国と比較していきますと、
例えばOECDのデータを見ると、
過去4年間において、新しいビジネスをスタートする人口、
これも全人口の人口比率なんですが、
最も比率高いのは、ペルーで30%。そして、
第2位は、メキシコで29%です。
一方でアメリカは、わずか7%にしか過ぎません。

ここで一体何が問題になっているのかといえば、
アメリカのみならず、日本も起業する比率が低いということです。
例えば、ある時点で、日本の労働人口の中で
起業する人の比率はわずか3%というデータがあります。
ちなみに、タイは、日本の3倍です。
もちろん、インドや中国には、また別のデータがあるのかもしれません。

■制度的側面と文化的側面
新しいビジネスをスタートする起業比率というのは、
なぜ地域によって違うのか。当然、
地域間の差異については、ありがちな考え方として、
例えば、制度とか文化というような様々な説明あります。
制度的要素としては、例えば、税制規制、
資本市場へのアクセスと、更に法的システム、
組織的財産権といった要因が挙げられます。
また、文化的要素としては、例えば、
フランス人はワインが好きなので、ワイン飲みながら、
政治的な議論をするのが好きなので、
あえてベンチャービジネスやるというのは恐らく考えてない。
日本人は、むしろ安定したサラリーマン傾向が強いので、
わざわざ起業する考えもそれ程高くない
というような説明が分かりやすいです。
ただし、これらに対しては反論があります。
例えば、戦後の日本において、
なぜホンダとソニーのような
スタートアップ企業が生まれてきたのかです。
従って、習慣や文化だけでは理由が説明できず、
本質的な答えになっていないということです。

■「国の富」
先ほど紹介しましたシェーンの研究によれば、
彼はもっと面白い説明をしています。
つまり、重要な要素として「国の富」、
富の大きい国であればあるほど、
自営業する人、あるいは起業する比率というのは
低くなるという説明です。すでに安定しているのだから、
わざわざ危険なリスクを負わないということです。
もう少し詳しく説明しますと、なぜ豊かな国は
そうでない国と比べて起業する比率が低いのかといえば、
2つの説明あり、第1の説明として、
雇用の変化を挙げています。経済成長に伴って、
例えば、機械が生産現場に導入され、
規模の経済が達成されます。それに伴い、
企業はどんどん大きくなっていくので、
従業員に支払う賃金というものも、
レベルも上がっていきます。そうすると、
やはり自営業をするより、雇われて生活した方が
得だという考え方が当然出てきます。
経済成長に伴って実質賃金率が上がっていきますので、
個人企業を維持するためのコストも、
起業するためのコストも高くなりますので、
むしろ大企業の中に入って、高い賃金もらい、
安定した生活送った方が、1つの傾向として、
いわゆる豊かになっている国の中で
よく見られるのではないかなといわれています。

第2の説明としては、やはり富が蓄積することに従って、
結局創造される価値も変わっていくという点です。
どういうことかというと、例えば、農業から製造業、
あるいは、サービス業の方にシフトしていきますが、
こうした構造変化の中で、やはり起業する可能性
というものも変わってきます。
もともと農業を中心とする経済においては、
比較的に個人で農業をする、あるいは1人か2人位雇って、
自立しやすいのですが、しかし、
製造業に変わっていくと、機械の必要性、
あるいは初期の設備投資が必要になってくるので、
個人として、ビジネスとしてやっていくのは
複雑になるので難しいです。
初期投資も非常に膨大なものが必要とされます。
従って、雇用の変化、あるいは産業構造の変化によって、
国は豊かになっていき、そうした中で、
個人があえてビジネスをしようするような意欲も、
あるいは可能性も非常に狭くなってくる
という1つの解釈があります。
実は先日の講義で、これに関連することを紹介し、
学生に対し「この中の学生の中でどれ位の方が
アントレプレナーを目指しているのか」
という質問したところ、ほとんど手が挙がって来ませんでした。
その中の1人の学生が、松下 幸之助の例をあげたので、
「では、あなたは松下 幸之助になりたいと思うのか」
という質問したところ、「なりたくない」ということ言っていました。
日本はどうすればいいのかといえば、
極端な話ですけども、戦後に戻って何もない時代になれば、
別に新しいものが生まれてくると。
さらに極端な話を言うと、先ほどのシェーンが言っているように、
失業率が高ければ高いほど、
新しいビジネスを起こすような比率も上がってくるかもしれません。
日本にとって、戦後に戻ることはなかなか難しいかもしれないけども、
現在豊かになっている現実の中で、
いかにベンチャー精神を育てていくのかというのが、
政策的に、あるいは実務的な課題として
重要ではないかと思われる。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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