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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 国際会計基準への移行 (財務戦略/村藤 功)

国際会計基準への移行 (財務戦略/村藤 功)

08/10/17


■国際会計基準の状況
本日は、国際会計基準への移行ということで、
お話させていただこうと思います。
これは、これまで日本が、
日本独自の会計基準を使っていたために起こる話です。
ヨーロッパを中心に国際会計基準を作ったのですが、
日本とアメリカは、うちにはうちの事情があるので、
統一基準を強制することは、やめてくれないかな、
というようなことを言っていました。
ところが、国際会計基準にヨーロッパだけでなく、
中国やインドも参加しますと言い始めました。
そうこうしているうちに参加国が100ヵ国以上になってしまい、
アメリカも国際会計基準でもいいですよ、
というようなことを言い出しました。
このままでは、日本だけが取り残されてしまうということで、
国際会計基準でもいいのではないか、
という話に最近なってきたわけです。

アメリカが世界基準ではないというのが、
少し不思議な感じがしますが、
ロンドンに本部がある、IASBという、国際会計基準審議会、
International Accounting Standard Board
というのが基準を作っています。
もともと英米が会計基準をリードしていたのですが、
国際会計基準審議会が作った国際会計基準ができると、
EUが国際会計基準か国際会計基準と、
同等の基準の決算書を作らなければ、
EUの中の資本市場で資金調達を禁止するということにし、
ヨーロッパの攻勢が始まりました。

アメリカや日本は、一体どうやってこの国際基準に対応しようか、
ということで頭が痛くなってきています。
国際会計基準に、アメリカや日本が歩み寄っているというのが、
現状です。当初は、コンバージェンス路線といって、
自分の会計基準を国際会計基準に、
1つずつ合わせていくというやり方でした。
コンバージェンス路線に対して、国際会計基準そのものを、
自国内で直接使ってもいいですよ、
という方法をアダプション路線と言いますが、
後にこのアダプション路線に転換しました。
最初にアメリカが、アメリカの中で外資企業が、
国際会計基準を使ってもいいですよと言い始めました。
次にアメリカ企業に対しても、アメリカ会計基準だけじゃなくて、
国際会計基準を使ってもいいですよということを言いました。
これを受けて、日本としても、アメリカがそこまで歩み寄るなら、
国際会計基準そのものを導入して、日本基準をやめてしまうか、
それとも日本基準と国際会計基準の両立てにした方がいいのか、
ということで話し合っています。

日本基準をやめて、国際会計基準だけにしてしまうと、
泣いてしまう人達が出てきます。
それは日本会計基準に、色々と甘いところがあるからです。
国際会計基準にしてしまうと、突然、債務超過や、
赤字になってしまう日本企業が出てきて、それでは困ります。
とりあえず、日本基準と国際会計基準との両方を認める方向で、
今は検討しているという状況です。
基準というのは白黒を付ける話ですので、
企業をとりまく状況は一気に変わってしまいます。
多くのことが、国際会計基準になると変わってしまいます。
既に変わり始めていることもあります。

■基準変更による日本への影響
今年の4月から、国際会計基準に合わせて、
日本基準としても、海外子会社の会計基準を、
本社のある日本基準に合わせることになりました。
日本では、買収した時の、のれんの償却を、
しなければならないということになっている訳ですが、
海外では価値さえあればのれんの償却をしなくても、
良いことになっています。
例えば、アメリカ基準と国際会計基準、どちらも買収の時に、
のれんの償却しないことになっています。
それで、日本たばこ、JTが、ギャラハという、
イギリスのたばこメーカーを買った時に、
日本基準だと1千億円程度を、
毎年償却しなければならないところでしたが、
イギリスの国際会計基準を使って償却していませんでした。
しかし、海外子会社の基準を日本に合わせるということになると、
償却しなければなりません。
ところが、将来的に国際会計基準を使うようになると、
また償却しなくてよくなってしまいます。
このように2回も制度を変えなければならないという、
何か変なことになってしまっています。

それ以外にも、日本と国際会計基準との違いで、
不備が出てきたり、処理がややこしくなったりということが、
山のようにあります。
例えば、包括利益の話がそれです。
これまで、日本企業では、ある期に儲かったかどうかということを、
経常利益や当期利益といって計測していました。
ところが、国際会計基準では、包括利益といって、
金融資産や有利子負債を時価評価した結果も含めて、
その期の利益を開示します。
これでは、本業の利益が良かったり悪かったりというよりも、
金融資産や有利子負債の時価が変動したということで、
包括利益が変動してしまいます。
このように、本業でないところで、
利益が大きく影響される可能性があるということで、
日本企業は大変心配しています。

その他には、企業関係者との取引開示の話があります。
今までは、親会社が、親会社の役員や役員の親族、
お友達とか、そういう人達に対して、何か怪しい取引をしたときは、
開示しなければなりませんでしたが、
子会社を通じて怪しい取引きするということについては、
開示する必要がありませんでした。
ところが、これを国際会計基準にすると、
開示しなくてはなりません。
そうすると、日本企業の一部では、
子会社を通じて怪しい取引きをしていることがバレてしまいます。
本当は、そういうのをやめてから上場しないと、
投資家に申し訳ないのですが、会計基準が甘かったもので、
そういうことが結構起こっていました。
例えば、ミサワホームで子会社を通じて、
創業者の資産管理会社に400億位貸していたとか、
そういうのがバレてしまいます。
NOVAの猿橋(さはし)前社長も、色々ありました。
NOVAの場合は子会社だけが何かやっていたのか、
親会社も含めて色々変なことをしていたのか、
よく分かりませんが。
まぁ、そういう意味では、
企業が変なことをできなくなるというのは良い話しですね。

棚卸資産の評価法も変わりました。
棚卸資産や在庫といわれるものを、
買った時の原価で評価する原価法と、
今の値段と原価と比べてみて、今の値段の方が低ければ、
今の低い方の値段で評価する低価法がありました。
これまではどちらを使ってもよかったのですが、
国際会計基準に段々と合わせていくということで、
この4月から低価法でなければならないということになりました。
そうすると、買った時や作った時の値段ではなく、
マーケットが下がったら、下がった値段で評価しなければならないので、
不動産業界やアパレル業界、電気業界など、
持っている在庫がみな低い値段で評価される業界は、
大騒ぎになっています。

国際基準になって良いことが起こる話の1つとしては、
マネジメントアプローチの導入があります。
今まで連結決算のセグメント開示では、
グループ事業の内訳を見せていました。
これは実際の事業本部などとは全く関係なく、
経理担当者が、こういう内訳でとりあえず見せておこう、
というように開示していましたので、
事業本部長が結果について責任を取る必要はありませんでした。
ところが、マネジメントアプローチということになると、
全体の事業部門や、事業本部別に財務を開示する、
ということになりますので、これは外部の投資家にとって、
すごく分かりやすくなります。
説明する社長や、財務部長にとっても話が分かりやすくなります。
しかし、そのためには、グループ内の組織である事業部別や、
事業本部別、事業部門別に財務を把握できるような、
仕組みにしなければなりません。
それを整備しなければならない状況です。


■日本の今後
現在は、日本基準と国際会計基準の併存を認める、
というようなことを言っていますが、
日本基準が生き延びるかどうかはわかりません。
日本企業としては、どうしていいのか迷い、
大混乱になるでしょう。
段々と合わせていく、コンバージェンス路線に従えば、
数年をかけて合わせるのですが、
アダプション路線での国際会計基準の使用は、
2011年以降ということを言っています。
少なくとも3年位は時間がかかるだろうということです。
3~5年位の見通しで、国際会計基準を使ってよい、
ということにしようという検討を、今始めたところです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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