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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > WTO交渉決裂(財務戦略/村藤 功)

WTO交渉決裂(財務戦略/村藤 功)

08/09/26

■交渉決裂とその経緯
今日は、WTOの交渉決裂というテーマで
お話しさせて頂きます。
少し前になりますけれども、7月の末のことです。
ただ、これは2001年からずっとやっていることですので、
もう延々と交渉しているわけです。
2001年の11月に、カタールのドーハというところで、
農業品や鉱工業品の関税を大きく削減して、
グローバルな自由貿易体制を作ろうという話になりました。
しかし、この試みは過去に何度も失敗しています。
2003年にメキシコのカンクンでの議論が破綻したり、
2006年のジュネーブでも破綻してしまいました。
しかし、今度はアメリカとヨーロッパが歩み寄り、
何とか年末までに合意できそうだという期待が
高まったところでしたが、
やはり破綻してしまったという話です。


■各国の立場
ここで、各国の立場を見てみましょう。
アメリカやG8は、基本的に貿易自由化だ、
ということを言っています。
先日G8が洞爺湖サミットでミーティングを行った時も、
国際的な貿易や投資を推進すべきで、
保護主義的な圧力は好ましくないということを話し合いました。
何とか自由に、お互いに一番いいところで
生産して貿易するという形で、
世界的に発展していこうという話でした。

ところが、発展途上国としては、それはちょっと待ってください、
と言いたいところです。
グローバル化の推進や自由貿易は、
自国の経済を壊すことになるのではないか、
ということを懸念している訳です。
もともと先進国は、工業品をかなり自由に、
様々なところに売って回っています。
さらに先進国は農業品も、ある程度保護する一方で、
輸出しようとしています。
今度のWTO合意で自由化されてしまうと、
農産品も先進国から発展途上国に、
自由に輸出するという話が起こり得る訳です。

アメリカの多国籍企業などは、インドや中国に、
農産品を輸出したくてたまりません。
今回なぜWTO交渉が破綻したのかというと、
アメリカとインドが最後まで折り合えなかったためです。
インドとしては、アメリカを始めとした先進国が、
突然インドに食糧や農産物を輸出してくることで、
インドの農民が打撃をうけ、
立ち行かなくなってしまう事態を避けたかったのです。

農産物の緊急輸入制限には、
セーフガードの発動条件というのがあります。
インド政府が農産物の輸入に対して、
どういった場合に関税を課せられるか、
ということに対して、WTOのラミー事務局長は、
関税削減で輸入が急激に増えた場合に、
基準輸入量の140%に達した場合に発動してよい、
という提案をしました
。しかし、インドは発動条件を事実上撤廃し、
危ないと思ったら途上国の判断で、
政府が独自に関税を課せられるようにしてください、
とリクエストしました。
それに対してアメリカは、それではうちが輸出できなくなる、
と言って揉めたため、破綻したということです。


■日本の立場
日本の立場ですが、日本はこのWTO交渉で、
本来意図していたことがありました。
全ての関税を削減するという交渉の中で、
それぞれの国にとって例外扱いをする、
重要品目というのがあります。
その重要品目については、
関税をかなりかけてもいいということになっています。
重要品目を全体の中の何%にするのかということで、
日本としては、8%は重要品目として確保したい、
と思っていました。
ところが、アメリカとヨーロッパが、
4%~6%位でいいのではないかのと、
その数字で合意しました。
それを受けてWTOの事務局長が、
事務局長調停案として、原則4%、上げても6%、
ということを定義してしまいました。
これに日本はひっくり返って驚きました。
8%を守ろうと思っていたのに、
4%~6%で決定と言われて困ってしまったわけです。
しかし、日本のせいで破綻したと言われたくないので、
米国と新興国との間で、双方の顔色をうかがい、
どちらに立てば良いかとうろうろしていました。
ところが、インドとアメリカのせいで、
破綻してくれたので、日本としては実はほっと胸をなでおろしています。

あのまま交渉がまとまっていたら、
日本もとんでもない打撃をうけるところでした。
実は、日本は農産物に結構高い関税をかけています。
関税が200%を超える農産物が101品目もあります。
しかし、もし重要品目の割合が6%になってしまうと、
80品目位しか守れないことになってしまいます。
交渉がまとまると、21品目については、
あっという間に関税が下がり、
安い輸入品が流れ込んでくるので、
その分野の農業は、日本では破綻してしまいます。
自給率を上げるなんて状況ではなくなってしまうわけです。

政府が保護したお陰で、
日本の農業は弱りに弱ってしまいました。
農家1戸当りの耕作面積というのは、
ヨーロッパは日本の10倍、アメリカは100倍ということで、
規模で全く劣っています。
意外かもしれませんが、中国は人口や農民人口が多いので、
一戸あたりの耕作面積が日本より小さくなっています。
日本は、中国はともかく、ヨーロッパやアメリカに比べると、
非常に耕作面積が小さいです。


■今後の交渉と日本の対策
今回、WTOのドーハラウンド交渉が
また破綻しましたけれども、
この多角的貿易交渉がまとまるのは
もう時間の問題だと考えた方がいいと思います。
結局、インドとアメリカがもめて破綻はしましたけれども、
もうすぐアメリカ大統領が代わり、
新しい交渉がまた始まります。
そこでおそらく重要品目の比率は4%~6%位で合意されて、
日本の言い分は通らないでしょう。
そこで、農業がかなり自由化されてくることは、
まず間違いないです。
そうなってもいいように、できるだけ日本の農業の強化を
急がなければなりません。
農場の規模の拡大や、株式会社の導入、
それから付加価値の高い農産物の生産など、
ありとあらゆることをやって、
何とか関税が下がって安い輸入品が流れ込んで来ても、
日本の農業が生き延びるような形にしなければならないでしょう。
弱りに弱っている国内の農業のためには、
構造改革をして仕組みを変えなければなりません。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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