QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ベトナムのチャンスとリスク(国際企業戦略論/永池 克明)

ベトナムのチャンスとリスク(国際企業戦略論/永池 克明)

08/09/09

この番組では、BRICsを皮切りに、
アジア各国の電機メーカーや台湾の企業についてとり上げてきました。
今回は日本のODA(政府開発援助)で日本企業の贈収賄事件が
世間を騒がせているベトナムについてご紹介したいと思います。


ベトナム
ベトナム経済は、戦後、フランスから独立を果たしましたが、
その後南北に分断され、さらに米国とのベトナム戦争、
中国との紛争などの苦難を経験しました。
その後、南北を統一しましたが、
社会主義的な経済システムを採用したため、
高成長するASEAN諸国を横目に取り残されました。
しかし、1986年に本格的に開始したドイモイ(刷新)政策が
90年代に入って以降、市場経済化の方向を推進し、
外資系企業誘致を積極化させました。
その後、ASEANに加盟、WTOに加盟するなど
世界経済への仲間入りを果たし、高成長路線に乗りました。
現在では外資系企業の投資も活発化し、
日系企業のアジア投資投資戦略では、
ポスト中国はベトナム、あるいはインドとなっており、
対ベトナム直接投資が加速しています。
2007年末までの実行額は50億ドルとなり、日本が世界第1位となっています。


■ベトナムの経済的魅力

(1)良質で安価な労働力

ベトナムの人口はおよそ8400万人(世界13位)で
毎年100万人増加しています。
うち、20~30歳の若年人口が全人口の30%以上を占めています。
労働コストも国民1人当たりGDPでは中国人の
およそ36%にしかすぎませんし、質も高いです。
日系その他外国企業の評価は
「ベトナムの労働者は定着率が高く、優秀」というものです。
ちなみに、成人の識字率は2000年には93%、2006年には95%を超えており、
東南アジア諸国・中国・インドの中では最も高い水準です(中国の場合、2000年時点で84%)。

(2)進むインフラ整備

ハノイ―ホーチミン間の高速道路など道路も完成し、
タイ、ミャンマー―ホーチミンルートも通過可能になりました。
タイ・ラオス国境には第2メコン橋も開通し
輸送ルートが飛躍的に整備されました。
港湾の整備も進んでいます。
また、通信分野でも主要都市部では
必要な通信サービスが十分に受けられます。
電力インフラも発電能力は1万メガワットを超え、改善されつつあります。
また、ベトナムには豊富な水資源があり工業用水に事欠きません。

(3)工業団地の整備

南部、中部、北部に経済重点地区があり、
工業団地の80%はこの地域にあります。
外国企業の投資も活発化しています。
南部サイゴンハイテクパークにはインテルが10億ドル規模の投資を表明、
台湾パソコンOEM大手フォックスコングループが北部バクニン省の
工業団地に50億ドルの投資を発表しました。
2007年前半時点で253案件の外国投資案件20億米ドルとなり、
前年比2.7倍となって、工業団地の整備も進んでいます。

(4)投資関連法規の整備

重要なものでは06年7月施行の共通投資法と統一企業法であり、
これによってほぼ現在の中国並みの条件となっています。
07年1月のWTO加盟によってさらに投資環境整備が進みました。

(5)高い日本への高感度

中国や他のASEAN諸国とくらべても反日感情は薄いです。
むしろ日本人および日本に対して好感を持っているといえます。
東南アジアの中で、日本に対する感情が最もいいのがベトナムです。
ベトナムが1位で、2位がフィリピン、
それから3位がインドネシアといったような順番になっています。


■ベトナムのリスク

(1)独裁政権下の法制度

不十分な法制度の整備と法制度の唐突な変更があります。

(2)官僚主義

現場レベルにおける公務員の政策運営能力への評価が著しく低いです。
あらゆる手続きに手間と時間がかかります。
日系製造企業の55%が行政手続きの煩雑さを訴えています。

(3)汚職の蔓延

香港の調査会社の07年の調査によれば、
ベトナムは4番目に汚職がひどいとされています。
中国はベトナムより清廉との結果が出ました。
汚職はベトナム政府に根強く内在する問題です。

(4)税制

複雑で透明性を欠くため、どの税金を払うべきか十分に把握できていません。
これが外資系企業の事業遂行の障害となっています。

(5)知的所有権侵害

模造品、違法コピーソフトウエア。ある調査によれば、
ベトナムにおけるビジネスソフトの95%が違法コピーといわれています。
しかし、ベトナム政府は十分な対応策を準備できていません。
国際商業会議所の07年1月の調査では、
模造品撲滅に対する取り組みが遅れている国として
ベトナムはワースト6位にランクされています(1位は中国)。
地財に関しては07年に知的財産権保護に関する法・新知的財産法が制定され
以前より改善されましたが、知的財産権の定義などが明確でなく、まだ不十分です。

(6)管理職、労働者不足

高度教育を受けたエリ-ト層の絶対数が足りません。
また、留学先が旧ソ連・東欧圏であったため、
市場経済に精通した人材がまだ少ないです。
日系製造業の5割以上が管理職人材の採用に困難を感じています。

(7)労働争議

ここ数年南部を中心に労働争議が多発しています。
労働法では違法ストライキに対する罰則規定がないため、
違法ストライキはほとんど野放しになっているのが現状です。
現在政府は、労使交渉の手順の明確化、
違法ストライキに対する罰則規定について法整備を進めている最中にあります。


ベトナムは大きな魅力もあるがビジネスリスクも多いです。
入念なフィージビリティ・スタディによるリスク回避・軽減が不可欠です。
また同時に、現地に詳しいコンサルタントや弁護士の方々と組み、
進出していくような慎重な進出戦略が必要だと思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ