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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ベンチャーファイナンス~VCの近年の投資傾向とJ-SOX(ベンチャー企業/五十嵐伸吾)

ベンチャーファイナンス~VCの近年の投資傾向とJ-SOX(ベンチャー企業/五十嵐伸吾)

08/07/15

■近年の投資傾向
ベンチャーキャピタル(以下、VC)の
最近のトピックスをお話しして、
ベンチャーファイナンスについてまとめていきます。
前回、日本のVCの1社当りの投資金額は少ない、
というお話をさせて頂きました。

今回は、VCの近年の投資傾向についてご説明します。
まずは、投資の対象となる会社の種類について、説明したいと思います。
出来てすぐの会社を、スタートアップやシードと言います。
そして、その次の、製品が出来たかどうかの状態にある会社を
アーリーステージといい、実際に製品の販売が軌道に乗り始め
成長傾向が見えたステージを、レイター(後半)ステージと言います。
1999年から、マザーズやヘラクレスなどの新興企業向けの株式市場ができ、
業歴の若い会社でも株式公開が出来るようになり、
一時は、日本でもスタートアップ向け投資が随分増えました。
これは面白い傾向だと思っていたのですが、
昨年から今年にかけて、VCからの投資が、
後半のステージへ移ってきていることが明らかになりました。
つまり、出来るだけ安全な所に投資をするということが
主流となりつつあるということです。


■審査の流れと出資後の監視
VCは、まず初めに、どのようなベンチャー会社があるかを
発掘していきます。それが、1番大事なことです。
次に、見つけた会社の審査をします。
わかりやすく言うと、
その会社が投資して良い会社か悪い会社かを審査します。
3つ目は、実はその会社が良い会社でも、
例えば株価やリスクが高ければ、出資しません。
また、例え良い会社であっても、
投資条件が折り合わなく出資できないパターンもあります。

次は、出資した後の話をします。
VCは、ベンチャー企業にお金を出すだけではなく、
ベンチャー企業の経営をモニタリング(監視)し、
会社の成長を手伝います。
最後の段階(投資回収段階)では、エグジット、
つまりどうやって儲けるか、
つまり株式公開を狙うのかM&Aとするかなどの話をまとめます。


■スタートアップにするか、レイターステージにするか。
ベンチャー企業の発掘から審査にかかる手間、
それからモニタリングという流れを話しましたが、
これはスタートアップで行った場合も、
レイターステージで行った場合でも
同じ作業が必要になります。
つまり、スタートアップで5千万円を出資しても、
レイターステージで10億円を出資しても、
審査でかかる手間やモニタリングにかかる手間は
同じということになります。
スタートアップで出す金額というのは少額ですが、
前回述べた3つのリスクが存在し
アーリーであればアーリーであるほど成功確率が低いです。
一方、レイターステージに出す金額は大きくなりますが、
3つのリスクが下がりますので、成功確率は高くなります。
そのような傾向にあるので、手間も同じようにかかるのであれば、
レイターステージの方がいいと考えることもできます。

では、なぜスタートアップへ投資をする人が存在するかと言いますと、
若い、小さな会社の方が、初めに投資する金額が少額ですみ、
もしも大化けすると、一発逆転可能なようなホームラン(大成功)の
可能性があるからです。
レイターステージにいけばいく程、
ホームランのような大当たりする会社はないのですが、
三割バッターのようなもので、
安定しているというようなものになる傾向にあります。


■多額のファンドはレイターステージに向かっている
ファンドの話を以前しましたが、
例えば、ジャフコ(野村證券系のVC)は株式公開しており、
そのような大規模なVCが、150億円と多額のファンドを集めるようになってきました。
先程言いましたように、
ベンチャー企業の発掘から審査にかかる手間、
それからモニタリングという流れを考えると、
一人で何社も発掘して審査をしてということは出来ませんから、
多額のファンドを集めた会社が、できるだけまとまったお金を
ベンチャー1社に出す傾向になってきています。
30億円をまとめて、間違いないベンチャー企業に出資し、
一社当たり30億円出資して、5社位に投資して
回収を行えば良いという考え方になってきています。
そのような投資方法を用いているので、
ファンドの集められる金額が大きくなればなるほど、
投資する対象がレイターステージにいくという傾向が現れています。


■J-SOXによって生じた問題
もう1つ、最近の流れとして、
金融庁が新しく、J-SOX(金融商品取引法)を
施行したことに端を発する問題が生じています。

一つ目の問題としましては、
内部監査が非常に厳しく求められるようになってきました。
大手の会社にとっては、内部監査の手間は苦にならないですが、
創立してすぐの会社が株式公開をして、
同じような内部監査の体制を取ることは、
莫大なコスト増になります。
(J-SOXの実施に応える為には、年間1億円以上の
経費がかかることを、企業の社長から聞きました。
内部監査の費用を払う為に株式公開をするような現状は
おかしいのではないだろうか、という話が
ベンチャー企業の社長から出てきています。)

二つ目の問題としましては、
ジャフコなどのVCが運用する投資事業組合(ファンド)を、
連結決算に組み入れる会計処理方法から生じる問題です。
J-SOXが出来る以前は、
ファンドはファンド単体で決算を行っていましたが、
J-SOXが出来て以降、
ファンドの決算も、会社本体の決算と連結しなければならなくなりました。

VCのファンドというものは、一番初めに投資をしていくと、
最初の段階では失敗する傾向が強いものです。

例えば100億のファンドをどんどん投資していくと、
2年目、3年目というのは、失敗して株価がゼロになるところも
出てくるので、元本割れすることは当然ある話なのです。
例えば、10年間のファンドでは、6年目だとか7年目まで元本割れして、
残りの3年位でギューンと相場を回復してきて、投資利回り30%位になり、
初めに投資した資金が回収できるようになるのです。
つまり、10年の内7年間はマイナスの成績を収めるような形になり、
ファンドを沢山持っていれば持っている程、それが本体の会計に連結されると、
ジャフコの決算が非常に悪いように見えてしまいます。
その結果、ジャフコは、資本市場から評価されず、
株価が下がるので、できるだけ株価は下げないように、
レイターステージの投資をするようになってきました。
そして、最近話題の、サブプライム問題も関連しまして、
マザーズ、ジャスダック、へラクレスなどの新興企業向けの
株式市場に、株式公開する会社数が極めて少なくなりました。

■VCに望むこと
J-SOXによって、
ベンチャー企業側は、以前より内部監査にかかる費用分だけ
コストが増えるので、上場を厳しいものと考え、
VC側は、ファンドを連結決算しなくてはならないので、
大手のVCは、レイターステージに投資せざるを
得ない状況になってきました。

レイターステージにばかり投資できればいいのですが、それはできません。
最初のスタートアップやアーリーステージに
沢山会社があるからこそ、そこから会社が育ち、
レイターステージの会社が出てくる市場の構造なので、
最初の方に出資するお金が途絶えてしまうと、
その次に続くレイターステージの会社というのは生まれなくなります。
このような仕組みを考えると、
最近のレイターステージにばかり投資している傾向は
危険ではないのかと心配しています。
VCには、ある程度リスクをとり、
リスクを自分達で回収するように工夫し、
いい会社に思い切った投資をすることを望みます。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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