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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ベンチャーファイナンス~投資リスク(ベンチャー企業/五十嵐伸吾)

ベンチャーファイナンス~投資リスク(ベンチャー企業/五十嵐伸吾)

08/07/14

■前回のおさらい
日本のベンチャー企業は、
まず株式公開までにかかる時間が長かったので、
投資家がなかなか投資できるような状況ではありませんでした。
その環境を変えるべく、1999年からベンチャー企業向けの
証券市場が整備され、以前より投資家が投資しやすい環境になりました。
しかし、ベンチャーキャピタル(VC)からの投資は、
GNPの1割に満たない投資残高しかなく、
欧米と比べると残高の低さは際立っています。
また、ベンチャー企業1社当りの投資金金額も、極めて少なく、
このような状況では、日本のベンチャー企業は
何も出来ないのではないかというお話をしました。
(VCの実態調査を、経済産業省の外郭団体の
財団法人ベンチャーエンタープライズセンター[VEC]が毎年行っています。
http://www.vec.or.jp/toushi.html )


■日米VCの投資方法の違い
平成17年度(平成18年3月まで)の投資残高のデータでは、
新規に投資を受けた会社は、約1,800社です。
これに対して、1件当たりの平均投資額が7千万円と、
1億円を下回っています。
また、追加で投資を受けた会社は、600社ありますが、
1件あたりの投資金額は6千万円程度に収まっています。
VCの投資した会社数は、アメリカよりも圧倒的に日本の方が多く、
アメリカは日本と違い、投資をする会社を厳選して、
これぞという会社に厚く出していく方式をとっていることが明らかです。
1件当たりの追加金額も多く、日本のように、
新規に7千万円の投資、追加で6千万円の増資、
という少額の投資も見られません。

以前お話しましたが、創立してすぐの会社には、
3つのリスクがあります。
1番目は、製品ができるかどうかという製品開発リスク。
2番目は、売れるかどうかというマーケティングリスク。
3番目は、本当に会社として成功するかどうかといったマネジメントリスク。
その3つのリスクがありますが、
最初の新規の投資は、一番リスクが高いです。
しかし、会社が成長するにつれ、リスクは下がるので、
初めよりもお金は出しやすくなります。
2回目、3回目の方がリスクは下がるので、
より大きな金額を投資できるようになります。
このように目標を定めて、
そこまでの資金を出すのがマイルストーン投資と言います。

しかし、日本の場合は、1回7千万円、
(これは、平均の数値で、平均以下では、もっと大変でしょうが)、
2回目では6千万円しか出しておらず、
次につながるというよりは、出し切るという考え方で、
マイルストーン投資の考え方ではありません。


■日本のベンチャーキャピタリストの考え
九州の地方銀行が設立したVCの方(キャピタリスト)とお話した時に、
「いい会社があったら紹介してください」という話でしたので、
2つの質問をしました。
最初は、1社当りいくらまで出しますか、
それから、追加投資に応じてくれますか、
という質問です。
そのキャピタリストの返答は、
1社当り最高3千万円で1回きりしか出しません
というものでした。

例えば、真剣に製造業系のベンチャー企業を運営するならば、
製品開発から生産設備の投資が必要になりますので、
10億円程度必要になりますが、
もし1社から、3千万円しか集められないとすると、
30社位のVCを回らなくてはなりません。
30人の株主、キャピタリストに、経営者は、
経営状況の説明をしにいく手間がかかることになります。
経営がうまくいっている時はいいですが、うまく行かない事も多く、
往々にして計画は遅れるので、説明に時間を要します。
本当は、開発や営業に注力が必要なのに、です。
そして、次に、追加で資金を提供してほしいと願い出た時は、
出さない訳ですから、再度株主を増やさなければなりません。
審査は1回約3ヶ月かけて行いますので、1回審査し、
状況を見て、追加で投資するという方法は充分可能なのです。
1回しか投資しないのであれば、また別の会社の審査を、
一からやり直さなければなりません。
私としては、ベンチャー企業の経営者には、
資金集めに奔走するばかりでなく、
研究開発や営業の方に注力していただいたほうが、
ベンチャー企業は賢く成長すると考えています。


■リスクに対する考え方
日本のVCは、3千万円しか出さないということによって、
リスクをとると考えているのかもしれませんが、
実はそうではなくて、少額しか出さないことにより、
リスクを高めているのではないかと、私は考えています。
私から言わせると、そのような投資は、
3千万円も出して、宝くじを買うようなもので、
とてもとてもVCなんて言えないのでは、というのが本音です。

まずキャピタリストが、
特に親会社からの出向者が多く、
銀行や生命保険会社勤務であると、
ベンチャーが育つまで側にいることはできません。
腐ったレモンは3年でできるけれども、
真珠になるまでは7年か8年かかります。
失敗するのはすぐできるが、
成功するまでには長期間かかるよ、ということなのです。
3年おきに、キャピタリストが転勤すると、
投資のゴールまで見られないので、
できるだけ失敗するよりは、失敗しないような投資をする
というマインドセットが働き、少額かつ分散型な投資条件に
なっているのではないかと考えています。


■リスクの考えの違いがもたらす影響
日本はアメリカと比較してベンチャーの数が多く、
日本のキャピタリストは、絨緞爆撃的に、
少額を沢山ばらまいていることにより、
リスクヘッジしていると考えているかもしれません。
しかし、そのような形では、キャピタリストは
経営に深く口出しをすることができませんし、
他力本願になっているのが現状です。

私は、ベンチャーが育つかどうかは、
リスクに対する日米の考え方の違いが大きいと考えています。
最近アメリカでは、省エネルギーや太陽電池系のベンチャーに、
物凄い勢いでお金が流れています。
1社当り例えば30億円という莫大な金額を、平気で調達しています。
私は、ベンチャーに投資をする仕事をしていた経験から、
アメリカと日本の同じような太陽電池のベンチャーの技術を見ると、
実は日本のベンチャーの技術の方がいいものが多いです。
では、なぜ日本のベンチャーが成功しないかといいますと、
ベンチャーの周りのお金の出し方と腹のくくり方に問題があると思います。
資金が潤沢にあれば、ベンチャーとして成功するところも
多くでてきたかもしれないと考えています。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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