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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 排出権取引 (財務戦略/村藤 功)

排出権取引 (財務戦略/村藤 功)

08/07/11

■排出権取引の概要
5月に温暖化対策の話をさせて頂きましたが、
本日は排出権取引について
詳しくお話させて頂こうと思います。
ヨーロッパなどではもう始まっているのですが、
政府が企業にキャップレートといって、
温暖化ガスをある程度までは出してもいいけれど、
これ以上はダメという基準を設けました。
もしそれを超えてしまいそうになったら、
企業が排出権を買って来なければならない、
というような仕組みです。

しかし、そもそもそういったことをやるべきか、
ということも問題になっています。
排出権取引を導入しても、
世界中の温暖化ガスの排出は特別減らないのでは、
という疑問があります。
なぜなら削減できなかった分は排出権として
別の所から買って来るだけだからです。
ある場所から別の場所に権利が移転するだけのことです。
そんなことよりも、自分の国で排出ガスを減らすことに
取り組んだらどうかという考え方もあります。
排出権取引を導入すると、
先進国は皆途上国の囲い込みにかかります。
日本の政府や大企業は途上国に行って
排出権を買ってくる作戦を練りはじめました。
しかし、そんなことをやるよりは皆自分の国で削減すべきだ
という考え方もあります。


■日本の排出権取引
日本はなかなか排出権取引の導入に踏み切れませんでした。
これは排出権を買って来なくてはならなくなる業界が、
かなりの抵抗をしたからです。
今まで削減のために頑張ってきたのに、
これまでの努力を無視されて、
新たな枠組みが出来るから排出権を買いなさい
と言われるのは嫌だという話です。
ということで、特に排出枠を設定されそうな
電力業界や鉄鋼業界、
この辺の声を反映している経団連が導入反対を主張していました。
経団連がダメというので、経産省もダメだと言っていた訳です。

このようにもともとは財界から反発があったのですが、
今では少しずつ変わってきています。
現職の鴨下環境大臣は、
排出権取引を積極的に導入したい方で、
福田総理も7月の洞爺湖サミットに向けて、
何とかリーダーシップ取りたいという思いがありました。
一方で経団連に強い影響力を持つトヨタの奥田会長が、
東京電力の勝俣社長や、新日鐵の三村会長を説得していて、
財界が導入容認の方向に変わりつつあるという状況です。
そのような中、先日福田総理が
福田ビジョンなるものを発表しました。
これは削減の基準年に対して
将来の排出量の削減等を示したものです。


■福田ビジョン
そもそも京都議定書というものがあり、
今年から5年位かけて温暖化ガスを削減しなければならない、
ということになっています。
これは日本が1990年比で、
今年の4月から5年間の間に排出量を
6%減らさなければならないという取り決めです。
ところが、2006年に1990年比で6.2%増えてしまいました。
それを足すと12.2%も減らさなければならない状況です。

これに対して、ヨーロッパは中期ビジョンや
長期ビジョンを出そうということで、
2020年までに90年比で20%削減しよう、あるいは、
2050年までに90年比で、60~80%を削減しよう
というような議論を始めました。

一方、温暖化問題で主導権を取ろうとする福田総理は、
福田ビジョンの中で2005年比の60~80%を
削減したらどうかという考え方を発表しました。
これの面白いところは、基準年が違っているところです。
ヨーロッパでは1990年を基準年としていますが、
福田総理は、現状比、2005年比ということにしました。
2005年比にした方が、アメリカや途上国、
今まで参加しなかった人達が
乗ってきやすそうだと読んだのでしょう。
中国のように1990年ではデータがない国もあるのです。
しかし、福田総理の案も、ヨーロッパの案も、
削減の度合いは大差がありません。
ほとんど一緒と言ってもいいかもしれないくらいです。

とりあえず、削減のために
相当のことをしなければならないことだけは
間違いありません。毎年、世界のGDPの1.2%をつぎ込んで、
2050年位までには5千兆近くの
お金をつぎ込むというような想定です。
ここまできたら排出権取引の導入は
仕方のないことかな、と考えています。

排出権を海外から買うより、努力して自国の排出量を
削減するほうがいいに決まっていますが、
日本国内の排出量をどうやって削減するか
という問題があります。このままでは、
削減目標に届きそうにないので、
とりあえず個別企業に削減枠をふって、
これを超えないようにする為に、
個別企業ごとに頑張ってくださいということになります。
そこで排出権取引を導入しよう
という方向に段々となってきているわけです。


■日本の排出削減のための議論
現在は排出枠の扱いをどうしようかという議論になっています。
現段階で有識者検討会と有識者懇談会という
二つの会があります。有識者検討会というのは、
環境省のためのものです。
一方で有識者懇談会というのは、
福田総理直属のものです。
福田総理直属の有識者懇談会の中に、
先ほどの奥田会長、東京電力の勝俣社長、
新日鐵の三村会長などがいて、奥田会長が
嫌がる勝俣社長や三村会長を説得しているわけです。
このような状況で、まず環境省の有識者検討会は、
どういった排出権取引をやればいいのか考えてみて下さい、
とお願いをしました。有識者検討会は、
まずその川上企業と川下企業を分けなければならない、
と答えました。川上・川下というのは、
エネルギー供給側、エネルギー使用側の話です。
エネルギーを輸入したり生産したりする
商社や電力会社のような企業を川上企業と言います。
それから、エネルギーを使う方、エネルギーを
川上から買って使う企業を川下企業と言います。
このどちらを規制すればいいのかという議論です。
どちらを規制することが削減を容易にするのかということなのです。

川上企業だけを規制して、
川下企業を規制しないということにすると、
排出する元になるエネルギーの入口だけを規制することになります。
これで排出の全てを一応はカバーできるのですが、
結局はエネルギーを使っている人達を規制しないと、
どうにもならないだろうということで、
鉄鋼、化学、セメントのような大きな川下企業にも、
とりあえず削減義務を課して規制しようということになってきています。

ところが、電力はどうするのかという話になると、
この電力を使っているのは、オフィスや個別の家庭で、
山のような人がいる訳です。
この人達を規制対象にするのは無理なのではないかということで、
電力業界を規制しようかという話になってきています。
電力業界の人達は、企業のオフィスや家庭で
何をするかも分からないのに、全て我々が
責任を取らないといけないのは困ると文句を言っています。
個別企業の過去の削減努力を
考慮に入れない削減義務の設定が不公平であることも確かです。
電力会社に削減義務を負わせるにしても、
過去の個別企業の努力を考慮に入れようというのが、
現在の考え方の主流になってきています。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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