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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本の介護問題 (財務戦略/村藤功)

日本の介護問題 (財務戦略/村藤功)

08/07/04

■コムソン事件と介護業界
今日は久し振りに介護のお話をしようと思います。
以前グッドウィルの問題があって、
そこでお話をさせて頂いたのですが、
その後は皆さんも忘れかけているのではないでしょうか。
グッドウィル傘下のコムソンの問題なのですが、
経営者の折口氏だけが悪かったのか、
それとも業界全体に問題があるのかということに
皆が疑問を持ち始めています。
問題発覚当初は厚生労働省が
自分に対する批判を避けようとして、
どうもグッドウィルとコムソンが悪い、
というような話を強調していました。
そうするとグッドウィルとコムソンしか
悪くないように見えた訳です。
ところが、周りを見てみると他の事業者も
似たようなことやっていることが発覚してきて、
本当にコムソンだけが問題だったのか、
それとも業界全体が法律に則っての事業継続が
困難な制度になっているのかということが
最近問題になってきています。

厚生労働省としては、
年金や医療で民間参入を拒否しているのに比べれば、
かなり思い切って介護事業に民間事業者を入れる
という実験に踏み切ったわけです。
ところが、踏み切ったのはいいものの、
ボランティアでないと勤まらない給料しか払えないような
事業の組み立て方をしていました。
しかし、介護事業が始まり、
介護士として介護に従事すれば、
それなりの給料が貰えるのではないかと思って、
皆が始めた訳です。


■介護事業の実際
介護の仕事は大変なものです。
大変だから、一家の奥様が泣きながら、
もう嫌だというふうに言っていた訳です。
大変な仕事だから高い給料を払うのなら分かりますけど、
大変なのに低賃金で、永遠に賃金が上がる気配がない
という状況が見えてきました。
その結果、誰も介護の仕事に
応募しないという状況に陥っています。

現在のパートの介護職は、
求人が求職の何倍位あるのでしょうか。
全産業で見ると、パートの求人が求職の1.29倍です。
福祉職でいうと、求人が求職の1.55倍なのですが、
介護に限っては、2.8倍です。
介護職をやりたいという人の3倍位は、
仕事をして欲しいと考える事業者が
一生懸命探している状況で、
明らかに人材が不足しています。

簡単に言うと低賃金なのにとても大変なので
皆やりたくないのです。
仕事をやっても永遠に大変で、
将来の見込みが全くないという状況ですから、
人が集まらないわけです。
そこでグッドウィルとかコムソンは人員基準未達といって、
従事者がいないのに、いるように見せかけて
資格を持っている人数を虚偽報告していたのです。

問題は、他の事業者も皆やっているのではないか
という疑惑があることです。
人が集まらないわけですから、
実際は有資格者が事業所に2、3人しかいないのに、
別の事業所にあちこち配置してみたり、
複数の事業所に同時に籍を置かせたりするというようなことが、
他の事業でも起こっているのではないか
という疑惑があります。
そういう意味では民間業者を参入させて、
普通のサラリーを支払うというような業態に
まだなっていないようなのです。


■介護事業の収益の仕組み
福祉といえども、
事業として民間がやるからには利益が出ないと困ります。
しかし厚生労働省は、利益を得る、お金を儲ける人は悪人だ、
という風に思っている節があります。
問題はここにあるのです。年金でも医療でも介護でも、
結局、厚生労働省が儲けてはいけないと言うわけです。
ところが、民間の人から見れば
金儲けのためのみにやっているというよりは、
お客様に良いサービスを提供して、
喜んでもらえた時に結果として利益がついてくるだけの話です。
利益の為のみに事業をすれば、
日本では馬鹿野郎と言われて、
お客さんが付いて来てくれません。
厚生労働省は必要もないのに
利益目的の事業をさせないために、
介護に従事している人達全員に対して、
ボランティアを強いているというのが現状です。

働く人たちにとっては、
サービスの提供に対するそれなりの対価がないと
成り立たないわけです。
ところが、そのためのお金は一体どこから持ってくるの、
という話になると、事業所に給付される介護保険の100%を
厚生労働省が抱えているのです。
これがそもそもの問題です。
介護事業をする場合に、事業所が受け取る対価の全てが
介護保険から支払われるのではなく、利用者が払う、
もしくは介護保険給付を民間の保険会社に許す
というような仕組みにしておけば良かったのです。
ところが、民間事業者の参入は許すが、
対価の支払は全て介護保険からという
中途半端な仕組みにしてしまったので
実質破綻しているというのが現状です。


■療養通所介護の問題
医療と介護を巡るお話ですが、
療養通所介護も問題になっています。
余り耳慣れないと思いますが、これは何だかご存知でしょうか。
療養通所介護というのは、
通所介護に療養という言葉がくっついたものです。
通所介護というのは、介護サービスを提供する場所に
介護サービスの利用者が通うというものです。
逆にヘルパーが、利用者宅に訪問して
介護サービス提供することを訪問介護といいます。
ヘルパーが利用者の所へ行くと、
とても手間かかります。
車であちこち回らなければなりませんから。
利用者が事業所に来てもらって通所してもらう方が、
やりやすいのです。そういう状況ですから、
訪問介護の大部分は大赤字で、
通所介護は何とかなるかもというような差が
業界にあります。

話を戻して、療養通所介護というのは割と新しいもので
2年位前から始まりました。
これは通所介護の中でも医療ケアの必要な要介護者に
在宅生活を送りながら介護施設に通ってもらおうというもので、
中重度の要介護者、つまりある程度大変な介護が必要な人達が
通う所です。そうすると、大変な人達が来るのですから、
沢山のスタッフでお世話をしなくてはならない
と基準で決まっています。
しかし、その基準が結構厳しいために、
療養通所介護は通所介護に比べて、
大変な割に介護報酬がそれほど高くないのです。
その結果9割方が赤字で、療養通所介護は事業として
ほとんど成立していないという状況になっています。

厚生労働省がこの手の業態を作ろうと思ったとき、
色々な人たちがビジネスチャンスと思って
寄り集まってくる訳ですが、
事業に関わっている人全てが
不幸になるような制度を作って
一体どうするのでしょうか。
皆、一生懸命やっているわけですから、
従事者にはそれなりの見返りがあるという業態を
一つ一つ作ってくれないと困ります。
それが、官だけでは出来ないのなら、
官にそのお金がないのなら、
民間に任せたり、官と民と一緒にやるべきです。
そのような形でやっていかない限り、
この手の問題は永遠に解決されないと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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