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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ドイツの地方分権について② (国際企業戦略論/永池克明)

ドイツの地方分権について② (国際企業戦略論/永池克明)

08/06/24

■ドイツの特徴
ドイツは、正式名称を
ドイツ連邦共和国(ドイツ名でBundesrepublik Deutschland)と言います。
連邦(ブント)と16の州(ラント)から編成される連邦共和国になっています。
人口が8,250万人、日本の約65%と皆さんが想像しているより少ない人口です。
面積は、36万平キロメートルで、日本とほぼ同じの面積で、
欧州最大の国民総生産をあげています。
ドイツの特徴は、地方自治体が強い独立性を持っていることです。
16の州は、連邦と同様に、1つの国家であり、
ドイツ基本法に基づき、首相や閣僚が存在し、
国家的な機能の行使、あるいは国家的な任務、
例えば立法・行政・司法の遂行を州が行っています。
一方、連邦は、外交・防衛・国籍・旅券・通貨・外国との通商分野・
交通機関・通信機関などに限定して統括を行っています。
このように、連邦と州が完全に機能をわけている分野もあれば、
双方が共同で行う分野もあります。


■ドイツの税収の仕組み
地方分権が上手くいくか、いかないかというのは、
財政の話に深く関わってきます。
税収を、地方が持つか、中央が握るかに懸かっているともいえます。
日本の場合は、自治体の歳入に占める地方税収入が、約4割しかなく、
あとは、国からの補助金や交付金で賄われています。
ドイツの場合は、州の自主財源が71%もあり、
納税方法として、州が、まず税金をとって、
その後で一定割合を連邦に納めるという方法を採用しています。
アメリカの場合は、州の自主財源というのは54%で、
日本よりはるかに多いです。
日本の法人税や所得税のように、全部一旦国税で取っておいて、
その一定割合を地方に戻すという現在のような方法では、
国の権限が強過ぎて、地方の自由裁量の余地は非常に少なくなります。
地方分権を行うには、まず税収の流れをドイツのように、
日本と逆の流れにしていかないと難しいです。


■地方分権で生じる格差の解消
極度の地方分権を行うことで生じる問題も議論されています。
それは、人口が少なく、
税収が少ない経済力の弱い自治体の問題です。
これについて、ドイツは非常に知恵を働かせています。
例えば、ドイツでは、税制は、連邦基本法で
国内統一化されることで、調和が図られています。
税源偏在が大きい税目を連邦税と共同税にあて、
税源偏在が非常に少ない税目を、州税、市町村税に
あてるという税源配分を行っています。
この結果、各地方自治体間の税収格差が
広がりを緩和するように工夫されています。
ドイツの場合には、州の間の格差は、
ほとんど差がないという所まで調整されていて、
日本も見習うべきだと思います。


■日本がドイツから学ぶべきこと
ドイツは、非常に古い時期から、
11世紀、神聖ローマ帝国の時代から、
地方分権がなされており地方分権の伝統が根付いています。
だからこそ、地方分権がうまくいっているとも言えます。
州政府は、文化・教育・警察・行政全般の立案に
執行権限を持っています。
(例えば、大学の場合で、総合大学というのは、
全て州立で、原則授業は無料です。
カリキュラムも州が独自に作っています。
日本の文部科学省の様な中央機関がなく、
小学校とか中学校の教科書も州が独自に編集し、
その伝統と、歴史に根ざしたものを作ることが出来ています。
カレンダーもよくみると州によって祭日が異なっています。
警察官の制服も少しずつ違っています。)


こうしてみてくると、ドイツのように色々な面で分散していくと、
国としてのまとまりや、いざという時に迅速な統一的な行動が
できにくいのではないか、という反論も出てくるかもしれません。
たとえば、戦争の時などです。
ドイツという国は、これに対する対策として
かつてはドイツ参謀本部という組織をつくり、
当時としては世界水準を上回る整備された道路網(アウトバーンに引き継がれた)、
河川を利用した運河網、鉄道網を築き、スピード豊かな電撃作戦を可能にしました。
ドイツではこのような背景もあって経済学の中で
交通経済学(フェアケア・ビルツシャフト)という分野が
大変発達しています。


ドイツ人は自分の生まれ故郷のことをハイマート(Heimat)とよび、
それに強い誇りと愛情を持っています。
多くのドイツ人は生まれ故郷に残り、
代々続いた職業に就くことが多いのです。
優れた人材も故郷に残り、
地方政府や地元企業の責任者として活躍する傾向が強いといえます。
かたや、日本の場合、優秀な人材や若い世代が
どんどん東京や関西圏に流出していったのとは際立った対比を示しています。
仕事場も地方にたくさんあるからです。


ドイツの場合は、税収の流れを、州を中心にするということで、
地方分権を機能させています。
もちろんそれが基本ではありますが、
それ以上に、地方に住む人々が、どれだけ自分の故郷に誇りと愛情を持つか、
あるいは個性豊かなアイデンティティを持ち得るかが大事だと思います。
また、それに基づいた自らの州のあるべき構想や目標、
そしてそれを遂行する戦略を持ち得るかどうかにかかっていると思います。
それはドイツだけでなく、
日本で地方分権を推進する場合も同じだと思います。
私たちは地方分権や道州制を議論するとき、
ドイツの例を大いに参考にすべきだと私は思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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