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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > サービスのイノベーション(イノベーション/永田)

サービスのイノベーション(イノベーション/永田)

08/04/02

今回は、
イノベーション・マネジメントを
めぐる最近のトピックを一つ
取り上げてみたいと思います。


これまでの話の中で
私がイノベーションの説明のために
挙げてきた具体例は、
いずれも製品という有体物の
革新であったかと思います。
例えば最近の放送で取り上げた
自動車、医薬品などです。
それは、イノベーションに関する
我々の研究が、主として
製造業を対象に行われてきた
ということを反映しています。


ところが近年、
モノではない領域、
すなわちサービスにおける
イノベーションの重要性が注目されています。
ただ、GDPや産業別就業者数に
占めるサービス部門のウエイトが
製造業に比して高くなっており、
経済成長がサービス部門によって
牽引されているというだけのことであるならば、
すでに先進諸国では
数十年前から明らかになっている現象です。


製造業の内部においても、
いわゆる間接部門によるサービス活動が
付加価値生産に大きく寄与している
ということでさえ、とうの昔に指摘されています。
では、いま何故サービスが、
こと新しく注目されているのでしょうか。


流行の発信源は、またしても米国です。
サービスのプロセスを
科学的な研究の対象とする
新たな学際的研究分野が
「サービス・サイエンス」と呼ばれていますが、
例えばIBMのようなメーカーは、
この分野の研究に力を入れています。
また、前にも触れました
米国競争力評議会が、
2004年に発表した”Innovate America”、
通称「パルミサーノ・レポート」の中では、
イノベーションを促進する方策の一つとして
サービス・サイエンスの推進が提言されています。
こうした動きを受けて、
MOT(技術経営)をめぐる最近の
国際学会では、
しばしばサービス・サイエンスが
統一テーマとして取り上げられていますし、
経営学分野の日本のジャーナルでも、
その特集が組まれたりしています。


私は、そうした国際学会などでの
議論を注意して聴いているつもりですが、
少なくとも現段階までの議論については、
率直にいって、その意義が
どこにあるのか理解し難いという
感想を持っています。


例えば、サービス・サイエンスを
標榜する人々は、モノとサービスという
二分法を否定して、モノの生産も
サービスとして捉える観点を提示しています。
それは面白い観点かも知れませんが、
問題は、そのような見方に立つことが、
我々にいかなる地平を
拓いてみせてくれるのかという点にあります。


私は、モノ作りのプロセスを
サービスに還元して捉えるという見方は、
却ってサービスの定義を曖昧にし、
ひいてはサービスの経済的な重要性を
見損なわせることになるのではないかと懸念します。
むしろモノ作りとサービスの
本質的な差異と相互の関連を
把握することによって、
サービスという経済活動の
重要性が理解できるでしょう。


サービスという経済活動の
特質については、
既に80年代に議論されています。
モノ作りと比較して明らかに
異なるサービスの特徴の一つは、
生産と消費の時間的・空間的な
同一性にあるとみられてきました。
この特徴は、サービス活動の全てに
当てはまる訳ではないでしょう。
例えば、サービス活動の例として
情報の提供というプロセスを考えるならば、
その生産と消費の時間的・空間的な
同一性は、情報技術の普及と高度化によって、
かなりの程度解消されています。
しかし、この特徴は
今日でも多くの対個人サービスなどにおいては
本質的なものです。
例えば、医療というサービス活動について、
それが医師によって提供される時間(生産)と、
それを患者が受ける時間(消費)を
区別することはできません。
つまり、このようなサービス活動では、
生産された価値が一旦モノに
移転されるというプロセスを経ないため、
プロダクトとプロセスを
区別することができないのです。
モノという媒体を持たないのですから、
その価値は在庫として
貯蔵しておくこともできません。

このことは、従来モノ作りの
イノベーションを分析する際に用いられてきた
プロダクト・イノベーションと
プロセス・イノベーションという
おなじみの二分法が、サービス活動には
適用できないということを意味しています。
サービス活動のイノベーションを
分析的に理解するためには、
我々はモノ作りの分析とは
異なる道具立てを必要としているのです。


この点は、イノベーションに
関する統計調査の国際的標準化を
推進してきたOECDにおいても、
90年代以来、問題にされてきましたが、
これまでの検討の結果は、
伝統的な二分法をサービス産業の
調査にも何とか適用しようとするものでした。
しかし、私は、サービスの
イノベーションの特質を把握するためには、
例えばデリバリーコストの削減、
サービスの質的向上といった
目標志向型の固有のカテゴリーを
設定した方がよいのではないかと考えています。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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