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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 原油価格高騰のヘッジ (国際経営・国際ロジスティクス/星野)

原油価格高騰のヘッジ (国際経営・国際ロジスティクス/星野)

08/03/12

■原油価格高騰による影響
原油価格高騰の影響が、様々な面で現れています。
国際労働機関(ILO)は、原油価格高騰に加えて、
世界的な金融市場の動揺による景気悪化で、
2008年の世界の失業者数が500万人増加する
可能性があると発表しています。
また、先日、国内の電力9社と都市ガス大手4社は、
今年の4月から6月の料金を
大幅に値上げすることを発表しました。
農林水産業、工業、サービス業などのあらゆる業界で、
石油は直接的・間接的に必要とされていますので、
今回の電力とガスの料金の値上げは、
さらに様々な分野に波及するでしょう。


特に、国際輸送に関わる海運や航空業などは、
燃料の値上がりで大きな影響を受けます。
海運大手の日本郵船では、
燃料となる重油1トンあたり1ドルの値上がりにより、
約3億円の減益といわれています。
また、日本航空や全日空では、
燃料費高騰に伴う収支への影響を少なくするべく、
不採算路線の撤退を進めています。


■原油価格高騰に対するヘッジ
ただし、
国際・国内航路を運航する海運企業や
国際線の航空会社などの輸送機関は、
原油価格高騰のインパクトを
軽減するための手段を持っています。
国際航路であれば、
BAF (Bunker Adjustment Factor)と呼ばれる
燃料油割増料金がそれあたります。
1970年代半ばの第一次オイルショックの時に、
船舶用燃料が現在と同様に高く値上がりし、
かつ著しく変動しました。
この変動を運賃に反映させる割増料金として、
BAFという特別なサーチャージが設定されました。
つまり、想定外のコストの上昇という
リスクをヘッジする仕組みですが、
これは顧客である荷主に対し、運賃としてコストが
転化されることになります。


こうした海運業で導入されている方法を真似て、
航空業界でも2005年ごろから、
燃料特別付加運賃というフューエル・サーチャージ
あるいは燃料サーチャージを運賃に付加しています。
例えば、日本航空で
日本から米国本土へ向かう路線の運賃には、
片道17,000円のサーチャージが適用されていますし、
日本から中国への路線では、
同様に5,900円が付加されています。


このサーチャージは、一般の方には
なかなか見えづらいものだと思います。
最近では、海外旅行の広告にかなり安い
ディスカウント料金の航空券や
パッケージ・ツアーが表示されていても、
実際の支払い額は意外なほど高いという
例が増えているようです。
サーチャージが、
通常の運賃とは別に記載されていることや、
その表示が非常に小さいことが、
トラブルの原因にもなっているようです。
さらに、
サーチャージ自体の存在やその算定根拠について、
納得することが難しいこともその一因と考えられます。


ユナイテッド航空などでは、
サーチャージの改定と廃止の基準について、
「シンガポールの航空燃料=シンガポール・ケロセン
の価格を基準として、直前の3ヶ月の平均価格の
変動が反映されること」をチャートと共に明示しています。
しかし、単にサーチャージが料金に付加されると
記載するだけでは、多くの個人や企業の荷主にさえ、
キャリアが負担すべきリスクを顧客にストレートに
ヘッジしていると受け取られてしまうでしょう。


国際輸送に従事する海運や航空業は、
サーチャージを設定する以外にも、
燃料の先物取引で急激なコストの上昇の
リスクを抑えようと企業努力をしたり、
石油会社との長期契約を通じて一定期間の
価格の安定化を図っています。
高い燃料代が、
輸送費として日本経済の必要とする天然資源、
原料や穀物などのバルク貨物の輸入や製品輸出に
負荷されることを避ける必要はありますが、
誰かがそのコストの上昇分を負担していることになります。


私たちの日常生活においても、
ガソリンの価格の変動に一喜一憂したり、
離れていても価格の安いガソリンスタンドに
給油に行こうとすることがあると思います。
これもわずかながらでも、リスクのヘッジかもしれません。
しかし原油価格の高騰は、
それに対するヘッジの方法を持たない
タクシー業界にとって、深刻な問題となります。
タクシーの料金は、均一料金に決まっています。
もし仮に、タクシーを降りる際に、
燃料のサーチャージの支払いを請求されても、
誰も納得できないでしょう。
燃料油割増は、有効な手段ではありますが、
よりわかりやすい説明が必要に思えます。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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