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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ナショナルイノベーションシステム(ベンチャー/永田)

ナショナルイノベーションシステム(ベンチャー/永田)

07/08/07

前回は、
企業のイノベーション活動にとって、
外部の情報源が
重要だということをお話しました。
イノベーションの中心的な担い手は企業ですが、
イノベーション・プロセスは、
企業が単独で遂行できるものではなく、
外部のアクターとの繋がりが、
重要な役割を果たしているということを、
このことは端的に示しています。


■企業と企業以外のアクターの相互作用
今回は、
企業と企業以外のアクターの
相互作用によって、
イノベーションが遂行されるプロセスを、
全体的に把握するための視点について
お話をしたいと思っています。
イノベーションに関与している
企業以外のアクターには
政府、そして大学があります。


政府はどういう役割を
果たしているかと言いますと、
科学技術政策や、
あるいは産業政策等を通じて、
イノベーションを促進するための
制度的な枠組みを提供しています。
また、企業にとっては
十分なインセンティブが持てない研究テーマ、
つまりすぐには
利益に結びつかないタイプの研究があります。
それは例えば基礎的・科学的な
研究テーマですが、
そうした研究テーマを
公的な研究機関を通じて
推進することも
政府の役割の一つです。


では大学はどういう役割を
持っているかといいますと、
一つは高等教育の機能です。
それによって、
イノベーションの担い手となる人材を
供給しています。
また大学は研究機能も担っていますから、
その中で基礎的、科学的な知識を生産し、
知識の供給源にもなっています。


企業はこうしたアクターとの
相互作用を通じて、
イノベーションを遂行していきます。
この相互作用が行われる場を
一つの国における
システムとして捉えるときに、
私たちに与えられる全体像を
ナショナルイノベーションシステムと
呼んでいます。


■ナショナルイノベーションシステム
ナショナルイノベーションシステム(NIS)
という概念は、
1980年代の後半頃から
注目されてきました。
当初、クリストファー・フリーマンや、
リチャード・ネルソンといった
研究者によって提唱され、
次第にOECDのような国際機関の中で、
科学技術政策をめぐる様々な議論に
用いられるようになってきました。
そこでは例えば、
各国におけるイノベーションを、
単に個別要素の集合として
捉えるのではなくて、
要素の集合には還元できないような、
ある全体性を持ったシステムとして
把握しようという議論が
盛んに行われてきました。


■日本のイノベーションシステム
これまでの研究の中で、
日本のイノベーションシステムの
特徴について、
指摘されてきたことが
いくつかあります。


その一つは、
他の先進国に比べても、
企業による研究開発活動が、
極めて旺盛だということです。
日本の企業では、
活発な研究開発投資が
行われています。
そのような活発な投資は何故、
また、どういう背景の下で
行われてきたのかといいますと、
例えばメインバンクシステムや、
あるいは株式の持ち合いといった
経営慣行の下で、
長期的な成長を経営目標する
意志決定が可能であったということが、
要因として挙げられてきました。
よく言われるように、そうした株主は、
あまり企業の研究活発投資に対して
干渉しないわけです。


日本のイノベーションシステムの
もう一つの特徴は、
資本コストが相対的に安い
ということです。
また、大学進学率が相対的に高く、
若年の研究開発人材が
潤沢に供給される環境にあったことも、
重要な成長メカニズムだったとされています。
一方で企業も、
人材の育成に熱心に取り組んできたと
言われています。
ご存じのように、
日本企業には長期勤続の慣行があり、
これを前提とした
ジョブローテーションが
行われることによって、
様々な部門に関する
知識の共有が促進されています。
その結果として、
例えば研究開発部門と生産部門のような、
部門間での連携が
効率的にとられるようになります。
こうしたことが、
日本企業のイノベーションを説明する要因として、
指摘されてきました。


■日本のイノベーションシステムを取り巻く環境の変化
しかし、近年、
日本のイノベーションシステムを
取り巻く環境は
大きく変化してきています。
例えば、
現在の若年人口は減少傾向にありますから、
それによって潤沢であった研究開発人材の供給は、
徐々に停滞する事になります。
若年人口が減少しているということは、
言い換えれば、
人口構成が高齢化するということです。
高齢化は貯蓄率を低下させる傾向を
持つと言われています。
そうすると、
資本コストも上昇することが見込まれます。
したがって
日本企業が従来、
投入要素において享受してきた、
成長メカニズムは、
これまでのようには
立ち行かなくなるということが、
予測されるわけです。


これまで日本企業は
いくつかの産業分野で、
強い国際競争力を構築してきました。
その結果として、他の先進諸国との間で、
激しい製品開発競争や、
技術開発競争が展開されることは
避けられません。
一方で韓国、あるいは台湾といった、
アジア諸国の企業が
競争力を向上させてきています。
このため開発競争は、
一層グローバルな文脈で
展開されるようになっています。
さらに、製品開発や、技術開発は、
単に高機能・高性能の製品を
低価格で提供することを
追求すればいいといいうのではなくて、
例えば製品開発において、
地球環境問題に対して配慮することなどが、
益々要請されるようになってきています。
言い換えれば、
開発競争の次元が多様化しているのです。

このような変化は、
従来とは異なった成長メカニズムの中で、
新しい産業の創出に結びつく、
画期的なイノベーションを
日本の企業が追求しなければならないという
課題を迫るものです。
このような変化に対応するために
日本のイノベーションシステム全体が
どういう方向に
進化していったらいいのかが問われる、
一つの岐路に直面しているといえます。
このような課題が
第一回の最初に触れました、
現在、日本の政府が推進している
イノベーション政策にも投影されていると
みることができます。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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