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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > イノベーションのダイナミクス(イノベーション/永田)

イノベーションのダイナミクス(イノベーション/永田)

07/07/25

今日は、イノベーション自体の
時間的な変化(ダイナミックス)の
捉え方についてお話しします。
イノベーションとは、
それ自体が大きな革新を
市場にもたらすものですが、
イノベーション自体もまた、
大きく推移していく場合があります。
その捉え方についてお話しします。
以前、イノベーションによって
持続的な競争優位を確保するのが、
ことのほか難しいということについて
お話ししたと思います。
それは、イノベーションのプロセス自体が
大きく変化していく事に、
深く関係しています。


■イノベーションのダイナミクス
一般的に、ある産業の発展を
歴史的に追跡してみますと、
初期の段階では
多様な製品のデザインが
市場に投入されます。
この時期は流動期と言われます。
そこではまず、
新しい製品を開発して
市場に投入するという
プロダクトイノベーションが
活発に行われるのです。
しかしやがて、
様々な製品デザインの中から、
事実上の標準としての地位を占めるような
支配的なデザインというものが現れます。
これはドミナントデザインと呼ばれます。
ドミナントデザインが一旦確立されますと、
企業間の競争の焦点は、
新しい製品デザインを構築するということから、
より低価格でその製品を提供するということに
シフトしていきます。
この段階に入ると、企業は、
コスト削減のための
プロセスイノベーションを
活発に行うようになってきます。


したがって、プロダクトイノベーションの波と
これに遅れて、プロセスイノベーションの波が
やってくるという図が描かれます。
やがて、市場が成熟して来ると、
プロセスイノベーション自体が
次第に停滞していきます。
そのような一種のライフサイクルが、
イノベーションに存在するという事を、
アバナシーとアッターバックという
2人の研究者が明らかにしてきました。


例えば、今日私たちが使っている
ノートパソコンを例に
考えてみましょう。
こういう携帯用のパソコンというのは、
おそらく当初はサイズや、
基本的な機能、
あるいは重量などについても、
いろいろな仕様の製品が
市場で乱立していたと思います。
しかし、やがてその中から、
基本的にサイズはA4、
基本機能はこういったものといった、
今日我々が普通に
ノートパソコンとして
イメージする製品の仕様が
選択されてきたでしょう。


企業は、一度自社の製品を、
ドミナントデザインとして
確立することが出来たとしても、
ドミナントデザイン確立以後は、
すでに競争の焦点が
プロセスイノベーションに
シフトしているわけですから、
必ずその確立に成功した企業が、
競争優位を持続できるとは限りません。
ですから、イノベーターは、
その次には何をすべきであるかというと、
コスト削減を追求するために必要な生産設備などの
補完的資産を確保するという事が、
決定的に重要になってきます。
例えば、そういう生産機能を持っている
サプライヤーが沢山ある場合、
競争的条件でサプライヤーと契約が出来ますから、
市場においてアクセスすれば良いのです。
しかし、時として
そうした補完的な資産が、
非常に特殊な物であって、
競争的な条件ではアクセスできないということが
あるかもしれません。
そういう場合は、その資産を
企業の内部に統合することが行われます。
例えば、設備投資を行うとか、
あるいは、そういう機能を持っている
企業の買収などが行われます。
これは、ティースという研究者によって
論じられてきた戦略的意思決定の問題です。


■生産性のジレンマ
先程の話に戻りますけれども、
プロダクトイノベーションの波と
プロセスイノベーションの波は、
ラグを伴ってやってきます。
したがって、言い換えると、
それらを最適な時期に同時追求することは
企業にとって困難であるということになります。
概して、産業の成熟段階になってきますと、
プロセスイノベーションを追求するために、
大規模な設備投資が行われますし、
結果的に高度な生産性が
達成されることになります。
けれどもその時期には、
新たなプロダクトイノベーションが
生まれにくくなってしまう
ということがあります。
こういうのを、
生産性のジレンマと呼んでいます。
ですから、企業は、成長戦略において、
このジレンマをいかに克服して、
いわゆる産業の脱成熟を
図っていくかということが、
重要な課題になります。


■ジレンマからの脱出
これまでの研究の中では、
産業の脱成熟というのは、
要素技術レベルに
イノベーションが移行していく過程で
可能になってくるのだと言われています。
基本的なデザインは確立しているけれど、
その製品デザインを構成する
要素技術のレベルで
革新が起こることによって、
しばしば、脱成熟が
可能になってくる事があります。
もう一つ、
いま生産性のジレンマということについて
お話ししましたので、
クリステンセンという
研究者によって提唱されている、
イノベーターにとっての
ジレンマについても
お話ししておきたいと思います。


一般に製品の技術は、
その製品の性能を連続的に高めていく、
一定の発展の経路を
持っているといわれています。
仮に従来の技術に変わる
新技術が登場しても、
それを選択するということは、
従来技術において
実績のある企業にとって、
短期的にはその製品の性能を
引き下げることに
なってしまうものですから、
その技術に企業は投資しようとしません。
しかし、新しい技術も、
その発展の経路を持っていますから、
やがてその経路に沿って、
ユーザーの要求水準に
十分答えられる性能を
達成するようになってきます。
新技術は従来技術に対して
破壊的なイノベーションとしての効果を
持つようになるわけですが、
その時にはすでに、
従来技術で成功してきた企業は
新技術への投資に
失敗してしまうということが、
起こるというわけです。
ですから、企業にとっては、
イノベーションの変化を
素早く捉えて対応することと
そのために、
柔軟な組織構造や、
あるいは意志決定のメカニズムを持つことが
課題になります。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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