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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 「言葉とは」(マーケティング/出頭先生)

「言葉とは」(マーケティング/出頭先生)

07/07/09

■前回までの振り返り
3回にわたって、
マーケティングの原理について
やや哲学的な視点からお話しています。
最初にこれまでの2回を
ふりかえってみましょう。
初回は、マーケティングとは何かを、
コミュニケーションの重要性に
注目してお話しました。
私は自分のキャリアを通して、
マーケティングとは
マーケットを説得する為の技術であり、
その分野に関するサイエンスである
と考えています。


それに基づいて、前回は、
説得についてお話しました。
言葉とは「考える道具」であると同時に
「コミュニケーションの道具」でもあるという、
二つの異なる機能を持っています。
そして、説得は、
そうした言葉が持つ特徴と限界を、
よく意識した上でなされる必要があると論じました。
今回は結論ですが、前回に引き続き、
言葉のもつ特徴と限界について
詳しくお話しすることから
はじめたいと思います。


■「全体」と「部分」の関係をハッキリさせる
前回は、言葉というものについて、
我々が頭の中で考えていることは「全体」なのに、
言葉はそれを「部分」でしか捉えられない
ということをお話ししました。
それが言葉というものの
特徴でもあり限界でもあります。
しかしながら、物事を伝えるには、
全体と部分とをハッキリさせなければなりません。
部分だけ伝えていても、
物事は絶対に伝わりません。
なぜなら、考えというのは
全体像として存在するものですから。


どんなアイデアもプレゼンテーションも
全体なのであって、
部分だけを伝えていっても
相手には届きません。
ですから、言葉を使うときに
我々が本当に注意しなければならないのは、
今我々が使っている言葉が、
全体の中でどの部分を話しているのか、
どの位相なのか、
どのポジションなのか、
という点をクリアにして話さないと
なかなか伝わらないということです。


■言葉で「全体像」を伝えるには訓練が必要
これは言うは易いですが、
とても難しいことです。
私はこういう職業柄、
よく学生が就職相談に来て、
志望動機などを聞くことがあります。
しかし、それをしっかりと話せる人は
とても少ないのです。
それは、かいつまんで言うと、
部分の話、自分の希望だけを話していて、
全体像がハッキリ分からないからなんです。
あるいは、全体像は自分と共有しているに違いない
という甘えもあるのかも知れません。
言葉が全て部分の言葉になっていて、
全体として何を伝えたいのかが
分からないということがよくあるのです。


就職と言うことは
自分を売り込まなければならないわけですが、
この調子だと、部分部分で売り込む
ということになってしまいます。
就職でも面接でも、言葉を使わざるを得ません。
たしかに、表情であるとか、
言葉以外の要素も色々あるけれど、
やはり言葉で説得しなければいけません。
その時、言葉は部分しか捉えられませんから、
全体と部分とをどうやって組み立てて
自分のもつ全体像をハッキリさせるかということを、
常に注意して言葉を使うということが大事なのです。
これはある種、ビジネススクールにおいては特にそうですが、
訓練が必要になります。


■「単眼」と「複眼」
また、ものの考え方にも
部分と全体を見通すやり方があって、
「単眼」で片方だけから見ていると、
どうしても部分だけの見方になってしまいます。
だから立体的にものを見るように、
あるいは「複眼」でものを見るように、
一つの癖と言ってもいいですが
思考の癖を付ける。
複眼思考。
これが非常に大事なことなのです。


それはたいして難しいことではなくて、
例えば、よくプラス・アンド・マイナスと言いますけど、
プラスだけのサイドから見ていると
「単眼」になってしまいます。
プラスの時には必ずマイナスを考慮に入れる。
光があれば陰がありますから、
光の話をして、陰の話を触れたときに始めて
全体像を語れると言うことになるのです。
「これはいいものですよ」
という話ばっかりではダメなんです。
そのように、全体、全部が、
すべからく良いという話は怪しさを感じます。
大体が嘘だと思ったほうがよいでしょう。
光があれば陰がある。
プロがあればコンがある(賛成と反対)。
そして、プラスがあればマイナスがあるわけです。


■立体的に物をみる
例えばビジネススクールでは、
SWOT分析というものがよく使われます。
SWOTのSというのは「強み(strength)」を、
Wというのは「弱み(weakness)」を指します。
Oは「機会(opportunity)」を、
最後のTが「脅威(threat)」を指します。
この分析はどういうものかというと、
強みを見たら、
やはり弱みも見るのだということです。
この場合、「強み」とは
自分の会社の持つ強みです。
SWOT分析では、
強みもあれば弱みもあるだろう。
それから、機会もあれば脅威もある。
そういうふうに、この場合は四つの視点で、
環境の機会と脅威、
自分の中あるいは自分の会社にある
強みと弱みというものをハッキリ見て、
初めて全体が見通せるのです。
従って、単眼ではなく
複眼で立体的にものを見ているのだといえます。


いろんな事象によって
使うツール類は違うのですが、
例えば「歴史を見つつ現代を見る」という場合、
これは「通時的」か「共時的」か、
という言葉遣いをよくします。
今までの成り立ちを語って今を語る
ということをしなければ
全体像は見えません。
ビジネススクールでは、
ものを語るときにふさわしい
立体的な言葉の使い方というのを
身につける必要があるので、
一種の訓練としてこれを叩き込んでいます。


■マーケティングにおける「全体」と「部分」
ここまでは随分と
一般的な話になってしまいましたが、
全体と部分というのは、
実を言うとそれは結局
マーケティングの話になるのです。
よくセグメンテーション(segmentation; 細分化)
ということを言いますが、
これは全体の中かから
セグメント(segment)を切り取る
と言うことを意味します。
全体から部分を切り取って、
その部分に働きかける
というのがマーケティングなのです。
部分というものは
全体が見えなければ絶対に見えてきません。
全体があるから部分が取れるわけで、
部分だけ取るなどということは
決して出来ないのです。
マーケティングというものは
全体と部分の問題であり、
その部分に対して働きかける
ということが特に重要な点です。


消費者志向とはまさに
よく言われることですが、
これは生産者側が言っていることです。
生産者側は当然
自分たちの視点で市場を見るわけですが、
それだけではなくて、
消費者から見た時にどうなのか、
消費者志向というのがあって、
初めてマーケティングというのは
成り立つのです。
これは同じような事例で言うと、
マーケットインなのかプロダクトアウトなのか、
ニーズなのかシーズなのか、
などという問題と全く同じです。
そういうふうに、マーケティングも
全体と部分をしっかり見据えて
組み合わせていかなきゃいけないのだ
ということが結論となります。


全体とそこから選び取った部分に対して
しっかりとした訴えかけをしていくということは、
マーケット以外でも、
いろいろな場面において考えていかなければ
ならないことでもあります。
少し一般的な話になりすぎたかもしれませんが、
3回にわたってマーケティングの原理について
やや哲学的にお話してみました。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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