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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 外資による企業買収(財務/村藤)

外資による企業買収(財務/村藤)

07/06/08

今日は、「三角合併」を中心に
外資による企業買収のお話をします。


■三角合併の導入
最近、アメリカの投資ファンド、
スティールパートナーズが日本企業の株を
買いあさっているというニュースを耳にします。
スティールパートナーズは
明星食品やサッポロビール等の食品株の買占めなど、
日本の上場企業の株を密かに買い集めて、
適当なタイミングを見計らって
攻めてくるという敵対的なM&Aをしているようです。


今、この敵対的買収とは別に
「三角合併」という制度が注目されています。
これは今年の5月1日から導入されたもので、
外資が日本の会社を買うときに現金ではなく、
海外市場に上場している本社の株を払って
日本企業を買うという方式です。


本当は、新会社法が導入された
去年の5月に導入される予定でしたが、
この三角合併は日本企業にとって
危険な制度なので買収防衛策を準備するなど、
対応が必要ということで
導入を1年先延ばしした経緯があります。


この三角合併も
今年5月に導入され、それに間に合うように
日本企業は、買収の防衛策を
次々と作っていたようです。
あまり株主のことを考えてこなかった
経営者が日本企業には多かったので、
買収防衛策導入に当たっては
色々揉め事が起こりました。
これまではライブドアや村上ファンド、
そしてスティールパートナーズのような
経営陣の嫌がるようなことをする人たちが出てくると、
それらを悪者だと言っていれば済んでいました。


ところが三角合併が導入されると、
よく分からない企業以外にも、
GEやウォルマートのような世界を代表する
優良企業が出てくる可能性もあります。
GEが日立を買いに来ましたとか、
ウォルマートがイオンを買いに来ました
ということになれば日本の経営者は
単に相手を非難して済ませるわけにはいかなくなります。


■三角合併の防衛策 - 経団連の「特殊決議」- 
そこで経団連が
買収の防衛策として「特殊決議」という
新しい制度を導入しようとしました。
普通では「特別決議」といって、
株主の過半数が出席し、
出席した株主の3分の2が賛成すれば合併できます。
しかし、経団連が主張している
特殊決議は、これとは違います。
株主総会に来なくても
株主総数で過半数、かつ来た人も来なかった人も
含めた全体の議決権(総議決権)の
3分の2の賛成を三角合併には
必要とすべきであると主張しました。


それに対して、欧米からは「また邪魔するのか」、
「日本は相変わらず閉じた市場だ」など声が上がり、
日本でも経済同友会、経済産業省、
M&A業界等は特殊決議に反対だったので、
特殊決議の採用は見送られました。


■株の譲渡益に対する対応
普通の合併は、
買い取る会社が買われる会社の株主に対して
自分の株を提供します。買われる会社の株主は、
「買われる会社の株」を提供して
「買う会社の株」を受け取ることになります。
その際に、合併の場合は、
株の売却をしていないので譲渡益が生じたとはみなさず、
税金を支払わなくてよいという制度があります。
(通常、譲渡益が生じた場合は、キャピタルゲインとして、
税金を払うことが義務づけられています。)
つまり、合併で得た株は、
受け取った株を実際に売却するまで
課税が繰り延べられます。


では、三角合併の場合はどうでしょうか。
税制調査会の検討の結果、
原則として通常の合併の場合と同様に
受け取った株式を売却するまで
課税の繰延を認めるが、
租税回避と考えられる場合には
認めないとする方針を固めたようです。
特に実体のない「ペーパーカンパニー」や
タックスへイブンを使う場合には、
課税される可能性が高くなります。


■欧米の大企業が東証に戻ってくる理由
これまで、欧米の大企業は
東証に上場しても意味がないといって
いったん行った東証への上場をとりやめてきました。
ところが今、少し欧米の大企業が
東証に戻りつつあります。なぜかというと、
三角合併では、買収の対価として現金ではなく、
株をもらうことになります。日本の株主が、
欧米の株をもらっても売却手続きが大変です。
しかし、東証に上場していれば、
日本ですぐに売却することもできます。


つまり、欧米の大企業が東証に戻ってきた理由は、
三角合併を行うとき、買われた日本企業の株主が、
欧米企業の株をもらってすぐに
東証で株の売買ができるようにし、
安心して外資の買収に賛成してもらいたい、
という目的があるようです。


東証としては、欧米の大企業が
戻ってきてくれるのは嬉しいのですが、
日本の大会社が外資に買われていく
前触れなのではないかという不安も少しあるようです。


■三角合併の防衛策の是非
三角合併の前から、
ライブドアや村上ファンドなど
敵対的買収をしかけてくる企業が出ています。
これに対して、買われそうな企業は
どんな防衛をとればいいか、
ということが議論になっています。
そこでどんな会社が
買われそうになっているのかを見ると、
株主のお金を有効に使っていない企業が
結構あります。敵対的買収であっても、
今の経営陣より良い経営をしてくれるのであれば
株主は新経営者候補のほうがいいかもしれず、
現在の経営陣が株主の利益を侵害するような
防衛策をとることを許すわけには行かなくなります。


株主としては、今の経営陣と
買収をして新しく経営陣になろうとしている人達と、
どちらが良いか、落ち着いて考える必要があります。
そのため、すべての防衛策が
許されるわけではない、
という法律の流れになってきています。


■買収のターゲットになる企業
買収のターゲットになる会社の中には
大した経営をしていない会社もたくさんあります。
買収をしようとする人達が入った方が、
企業価値が上がり、株価が上がって
株主が喜ぶような場合、その企業は
ターゲットになりやすくなります。


素晴らしい経営をしていれば、
新しい経営者が入り込んできても、
簡単に価値はあがりませんから、
株主も歓迎できません。
ところがどう考えても今の経営者は良くなくて、
外国から新しい経営者が来て価値をあげることを
前提に公開買い付けで高い値段をつけてくれれば
喜んで売ってしまう株主もいるでしょうね。
そのため、買収のターゲットになりやすいのは、
きちんと経営をしていない企業です。
そういう意味では、外資の買収の防衛策として、
企業は、株の価値を上げるような経営を
することも求められているといえます。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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