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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本のトレードのリスク-日本籍船倍増計画-(ロジスティクス/星野)

日本のトレードのリスク-日本籍船倍増計画-(ロジスティクス/星野)

06/10/16

■日本籍の商船の数が20年で急減
今日は、海外とのトレード(=貿易)に
依存する日本の弱点についてお話したいと思います。
今、日本では、少子化による人口の減少が
心配されていますが、日本の船が20年間で
わずか10分の1に激減しているとすれば、どうでしょうか。
国土交通省がこの日本船の減少に歯止めをかけようとして、
「日本籍船倍増計画」に乗り出すことが発表されました。


国民一人一人に戸籍があるように、
船舶には船籍と呼ばれる登録があります。
日本の貿易を担って、日本の海運企業が
外国航路に運航する商船(外航船や外航商船と呼ばれます)は、
かつてその多くが日本船籍でした。
1985年には、1,028隻あったものが、
なんと昨年末では95隻に減少しました。
日本籍船が20年間で1割弱に減ってしまったということになります。


■日本の商船は、1割は日本籍、7割はパナマ籍
面白いことに、
日本の海運企業が運航する船の数は、
1970年代からだいたい2,000隻から2,500隻の間ということで、
あまり大きな増減はありません。
そうなると今お話したように、
日本籍の船がなくなるということは、
海外からの傭船(ようせん)、いわゆるチャーターに頼るか、
「便宜置籍船」というものにシフトしていったということになります。


実際、港で目にしたり、新聞で報道される多くの貨物船は、
いまやパナマやリベリア船籍です。
そして、日本の海運企業が保有する外航商船は、
約7割がパナマ船籍です。
つまり、商船を所有しているのは
日本の会社ですが、船籍はパナマということになります。


パナマという国は、人口は約300万人。
世界の人口65億人のわずか0.05%にすぎませんが、
パナマに船籍を持つ商船は、世界中の船舶の20%にもなります。
何故これほどまでにパナマ船籍の船が多いのでしょうか。


それは、法人税や船舶の登録税といった税制が有利であることと、
安全基準や船員の構成などの面で、自分の国よりも基準の低い国に、
便宜的に船籍を置く企業が増えたからといえます。
多くの先進国の企業が、あえて自国籍を避けて、
所有する船舶を海外に便宜置籍してきた結果です。
「便宜置籍国」と呼ばれる国には、
パナマだけではなく、リベリアやバハマ、マルタやキプロスなどがあります。


■日本籍船の減少にともなう問題
日本籍船が大幅に減少するということは、
日本人の船員の雇用機会もなくなることになります。
かつては一隻の船員全員が
日本人でなければならなかったのですが、
最近では船長と機関長が日本人であって、
その他の船員が外国人であって日本で認定される資格を持っていれば、
日本籍船として承認されるように法律が改正されました。
それでも、日本籍船の減少は進んでいます。


日本の海運企業にとって、
便宜置籍国に登録することは、
国際競争力を維持する為の選択ですが、
これだけ日本籍船が減少してくると様々な影響が生じます。


その最大の問題は、紛争などの非常時のリスクです。
航空輸送がこれだけ発達しても、
航空機で運べる品目や量には制約があります。
日本の貿易を支える大動脈であるこの外航船が、
非常時に日本の法律に基づいて運航できないとなると、
食料や原料や燃料を外国に依存する
日本の存立自体を脅かされることになります。


また日本の海運企業が所有している船舶であっても、
船籍が他国に置かれている為に船上で発生した事件に
日本の裁判権が及ばないことがあります。
実質的には、日本の船であっても、日本の影響が及ばないという問題です。


■国土交通省による「日本籍船倍増計画」
国土交通省の「日本籍船倍増計画」では、
日本の海運企業が海外の企業と対等の競争条件のもとで
国際競争力を維持できるように、日本籍船を新たに考え直そうとしています。
具体的には、「法人税」(利益に対する課税)から
「トン数標準税制」(船舶の保有量であるトン数に基づいて課税)を
導入することもそのひとつです。
この「トン数標準税制」は、既にオランダ、ノルウェー、英国などで
1996年頃から導入されていますし、2005年からは韓国でも採用されています。


国際間の貨物輸送は、
いずれの国も全く同じ環境で競争することになります。
日本の海運企業にとっては、
他国と同じ条件(=イコールフィッティング)で、競争力を高めることが期待されています。
一方で、なぜ海運企業だけが法人税でなく「トン税」という課税形態を取るのか、
また非常に好況の海運業界ですから、他の産業からの反発も予想されます。
そのため,日本籍船倍増の実現はそれほど簡単でないかもしれません。


今日は海外との貿易に依存する日本の弱点について、現状をお話ししました。



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分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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