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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 投資事業組合の連結 (財務/村藤)

投資事業組合の連結 (財務/村藤)

06/10/13

みなさんご承知の通り、
ライブドア(以下LD)前社長堀江貴文被告の公判が
9月4日に幕を開けましたが、今回はこれに関わる話として、
投資事業組合の連結についてお話ししていきたいと思います。


■ 投資事業組合

そもそも投資事業組合とは何なのかということですが、
これはいわゆる「投資ファンド」のことです。
この投資事業組合には大きく3つの形態があります。


まず「民法上の任意組合」というものがあります。
民法上の組合に関する規定の多くは任意規定であるため、
法律の内容よりも契約の内容が優先されます。
このため、この形態の組合というのは、
その組織構造が組合によって異なりえます。


次に「商法上の匿名組合」というものがあります。
これは商法535条に基づく投資事業組合であり、
営業者が匿名組合員から財産による出資を受け、
それに対し営業によって生じた利益を分配する
という形態をとっています。


最後に「投資事業有限責任組合」というものがありますが、
これは機関投資家の投資拡大やベンチャー支援などを狙って、
経済産業省によって98年に導入されたものです。
上記2つの組合は登記の必要がないのに対し、
この組合は登記を要することが一つの特徴と言えるでしょう。


この投資事業組合というものは、
実は会計監査上やっかいな問題を持っています。
それは、任意組合や匿名組合などは
出資者の匿名性が高かったり、
あるいは、投資事業組合が
別の投資事業組合に投資を行っていたりするため、
その実態を把握することが非常に困難だということです。


さて、今回のお話で最も重要になるのは、
企業と、その企業と密接に関わる投資事業組合の
会計を連結させるか否かという問題です。
というのも、法的に連結されないと見做される場合には、
今回問題視されているLDの決算(の一部)は
粉飾ではないということになってしまうからです。


■ 投資事業組合の連結ルールの変更

会計基準委員会といって、
どうやって企業の会計を行っていくか
というルールを作っている民間組織があります。
9月8日、この委員会が投資事業組合を
決算上連結させる場合のルールの変更を行いました。
その内容は、企業が投資事業組合を
連結決算から容易に外せなくなくするというものでした。


これまでのルールは、企業が50%以上の出資、
あるいは40-50%の出資を行っていて
実質的に支配を行っている投資事業組合については、
会計上これを連結するというものでした。
ポイントは「実質的な支配」というところにあるわけですが、
以前はこれを主に出資比率を基準として判断していたわけです。


しかし、新たなルールのもとでは、出資のみならず、
貸し出しなどによる資金提供や、あるいは利益配当
といったものが大半を占める場合なども
実質的な支配が存在すると見做され、
会計上連結しなければならないということになったのです。


会計基準委員会がどうして突然
このような変更を行ったかというと、
先日始まった裁判において、
投資事業組合を連結するか否かということで
堀江被告の行った行為が
合法なのか違法なのかが決まる
という状況になってきたためです。


■ LDの粉飾決算容疑

では、そもそも堀江被告らが何をしたのか
ということをお話ししたいと思います。
まずはお話に登場する会社ですが、


①LD、
②LDの子会社であるライブドアマーケティング(以下LDM)、
③実質的にLDの支配下にある投資事業組合、
④クラサワコミュニケーションズ


の4社です。


04年10月、LDMが
クラサワコミュニケーションズを子会社化しました。
この買収は株式交換によるものでしたが、
実はクラサワコミュニケーションズは、
LDの支配下にある投資事業組合によって
既に買収済みだったのです。


この株式交換により、投資事業組合は
LDMの株式を取得しましたが、
この投資事業組合もLDMも、
ともにLDの子会社であるならば、
この取引はライブドアグループ内における
子会社間の内部取引ということになります。
連結会計ルール上、内部取引は
消去しなければならないので、
グループとしては何も起こっていないも同然
と見做されるのです。


しかし、LDはこの投資事業組合を連結せず、
投資事業組合をグループの外部にあるものとして認識しました。
その結果、投資事業組合が株式交換によって得た
LDM株の売却益を原資とする投資事業組合から
ライブドア・グループへの配当(約37.6億円)を
ライブドア・グループの売上げとして計上したのです。
このことが粉飾決算にあたるということで、
証券取引法違反、具体的には
有価証券報告書の虚偽記載の容疑をかけられたということです。
投資事業組合がライブドア・グループの
連結対象子会社ではないとすれば、
この会計処理は違法ではなくなるので、
投資事業組合を連結対象とすべきかどうかが問題になるのです。


不適切な会計処理に関してはもう一つ容疑をかけられています。
それは、買収予定の企業2社との架空取引で
約15.8億円の売り上げを計上したというものですが、
これについては堀江被告側も、
それが不適切な会計処理であったことを認めています。
但し、そこには犯意がなかったということを主張しています。


LDの粉飾決算容疑とは、これらの会計処理によって、
実際は約3.1億円だった経常赤字を、
約50.3億円の経常黒字と偽ったのではないかというものです。


(尚、堀江被告個人としては上記の証取法違反の他に
偽計、風説の流布の罪にも問われていますが、
この話は割愛したいと思います。)


■ ルールのグレーゾーン

既述のように、ライブドア事件における非常に大きなポイントは、
投資事業組合を連結対象子会社とみなさなければならないかどうか
というところにあります。
それは、連結対象子会社ならば
LDの決算は粉飾ということになりますが、
連結対象子会社でないならば
一転して粉飾とはいいにくいことになるからです。


本件ではこの投資事業組合は
事実上LDの支配下にあったと考えるのが自然でしょう。
実質的な支配下にあるのであれば、
連結対象子会社として連結するというのが
基本的な考え方です。
しかし、従来の出資比率を中心とする連結基準では、
今回のケースを実質的な支配があったとみなして
連結対象子会社とできるかどうかは不透明でした。
そこでこれを粉飾決算と見做せるのかどうかが、
非常に微妙なところとなっているのです。


将来、同じような事態が起きてはいけないということで、
会計基準委員会によって新しいルールが発表されたわけですが、
事件の後に発表された新ルールにより、
投資事業組合に関連して
堀江被告が行ったような会計処理が
不適切だと決めるわけにはいきません。
ライブドア事件に対する国民の怒りは当然としても、
会計基準委員会の新ルールは
あくまでこれからの事件について適用されるもの
と考える必要があります。



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分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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