QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 拡大EU後の中東欧への外国投資 (国際経営/星野)

拡大EU後の中東欧への外国投資 (国際経営/星野)

06/07/31

■2004年にEUに加盟した中東欧地域
先日,
JICA(国際協力機構)の招待で、
2004年にEUに新たに加盟した中東欧地域から、
日本に貿易促進の研修に来られた経済官僚と
ディスカッションをする機会がありました。
彼らがいうには,
最近はかつてないほど
外国企業から工場進出の問い合わせがあるそうです。
今,「BRICs(ブリックス)」といわれる
経済成長の著しいブラジル(Brazil),ロシア(Russia),
インド(India),中国 (China)の4カ国が話題になっていますが,
今回は2004年に
EUに加盟した中東欧地域
(ポーランド,チェコ,ハンガリーなど10カ国)に
ついてお話をさせていただきます。


■中東欧地域が持つ利点
2004年5月に
EUが今までの15カ国から
25カ国に増加して、世界のGDP(国内総生産)の
約4分の1を占める巨大な経済圏が出現しました。
これに伴って,
ポーランド,ハンガリー,チェコ,バルト三国などの
工業生産能力が潜在的に高かった国と
大きな市場が従来のEUに付加されました。


これら中東欧地域は,
EU加盟国として,カントリーリスク(*)も低く,
法制度にも信頼性があり,
良質な労働力も比較的安く確保できます。
もちろんEUの加盟国として域内の関税もありませんし,
通関が非常に簡素化されています。
加えて地理的な条件に
恵まれていることからEU及び周辺国への輸出が容易です。
これら様々な利点を
持つ中東欧地域に対して,
自動車や電子機器の企業を筆頭に、
世界の企業から熱い視線が注がれています。


■進出する日本企業の例
これらの中東欧地域に
対する日本企業の進出の動きは如何でしょうか。
スズキは1991年から
もともとハンガリーで現地生産を開始しており,
既に国内シェアで№1を誇っていますが,
これからますます生産の拡大が予定されています。
トヨタはフランスの
プジョー・シトロエンのPSAグループと共に,
チェコで自動車の組み立てを開始し,
同時にポーランドではエンジンの生産を行います。
最近ロシアでの
自動車工場建設の動きが続々と発表されましたが、
こちらでも非常に積極的な投資が見られます。


■九州に匹敵する各国の自動車産業
日本自動車工業会の
資料によると,今年のポーランド一国の
自動車生産能力が約100万台。
来年にはスロバキアでも105万台に
なると言われています。
そうなるとそれぞれの国が、
自動車アイランド九州に匹敵する
生産能力を持つことになります。
自動車産業では,
完成車メーカーが進出すると
部品のサプライヤーなど、周辺に
関連産業が進出し,「産業のクラスター」が
形成されるというお話を以前したかと思います
(6月19日放送分)。

ヨーロッパのメーカーで
あるルノーは80年代の後半,
フォルクスワーゲンは90年代の初頭から
この地域に参入していますので,
すでに多くの
自動車部品メーカーが
中東欧諸国に進出しています。
それによる相乗効果から,
完成車メーカーが進出すると、
ますます部品メーカーもその周辺に
集中するという非常にいい連携が生まれ,
自動車産業の体制が整っています。


■中東欧地域のボトルネック
中国では
法制度の不備について
しばしば指摘されますが,
ハンガリーやチェコなどでは,問題はありません。
このように熱い視線が
注がれる中東欧地域ですが,
心配な材料がないわけではありません。
例えば,この地域の強みは,
ドイツに比べて人件費が5分の1程度というように,
労働コストの安さがありましたが,
最近急速に高騰しています。


もう一つは,
部品の調達や製品の出荷にかかる
ロジステックス体制の整備がまだ不十分です。
これらが,これからの
成長のボトルネックになる可能性があります。
例えば汎欧州運輸ネットワーク(TEN-T)と
呼ばれるプロジェクトがあり,
EUの中で高速道路網の整備が進められています。
このようにいかに
地域を貫く道路網が整備されても,
中東欧地域では国内の輸送機関や
物流拠点の整備が不十分で,
EU内の高速道路網と
繋がりにくいという問題があるわけです。


以前にも九州についてお話しましたが,
産業の発達とロジスティクス環境の整備は,
地域の発展に向けた両輪といえます。
あまり私達には馴染みのない地域ですが,
これからBRICsと共に,
中・東欧の動きにも目を向けていただきたいと思います。


* カントリー・リスク
  貿易や海外投融資で、相手国の政情不安・財政悪化などの
  ために資金の回収が不能となる危険の度合。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ